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イギリスEU離脱まで残り半年、投資家にとっては一世一代の好機となる?=俣野成敏

金融業界のトップたちがイギリスに集結してきている

荒木:はい。我々は金融を研究する傍ら、日々、業界の方々とお会いしていて、金融業界の“トップメジャーリーガー”がイギリスに集結してきているな、という感じがします。一番びっくりしたのは、お会いする10人中、イギリス人は3人くらいで、後はアメリカ、ドバイ、南米とか、スイス、リヒテンシュタイン、ルクセンブルク…といった外国人なのです。皆、現地で働いている人たちなのですが、それこそ世界中から金融の逸材が集まっています。

俣野:そうそうたる顔ぶれが集まっている、ということは、彼らを惹きつけているものがある、と。

荒木:俣野さんのご質問に順番にお答えしますと、まずは投資に関してですが、ブレグジットによってイギリスポンドが値下がりしていることは、外国の投資家にとっては、逆にポジティブ要因です。本来、通貨ポンドはもっと高騰していてもよかったのです。当時の世界経済の流れと、イギリスの成長具合や産業要因等を考慮すると。現在、ポンドは150円前後で推移していますが、ブレグジット前の2015年には200円近くまで上がっていたこともありました。

実は海外投資をする場合、考えるべきなのは利回りよりも、むしろ投資をする国の通貨が、対日本円に対していくらなのか?ということと、今後の見通しはどうなのか?ということの2点です。たとえば日本円が将来的に1米ドル50円になる、ということはあり得ないでしょう。このように、投資対象国の経済状況に関心があって、為替市場の相場や流れをつかんでいれば、ある程度の予測はつきます。

ブレグジット決定後も、意外に堅調なイギリス経済

荒木:続いてブレグジットの経済への影響ですが、現状では限定的なものにとまっています。もちろん経済にも大きな影響を及ぼす重大な決定ですから、今後がどうなるのかは、依然不透明な部分があり、紆余曲折は避けられないでしょう。けれども、現地では想像以上に冷静な対応をしている様子が見て取れます。

俣野:確かに、心配されていた経済への影響は、今のところ限定的なものにとどまっていますね。イギリスの実質GDP成長率は、ブレグジット前の2015年は2.3%でしたが、2016年は1.8%、2017年が1.7%、2018年も1.2~1.3%で推移しています。失業率も悪くありません。2015年は5.37%だったのが、2016年が4.91%、2017年が4.4%ですから、むしろよくなっています。

荒木:もともと、2008年に発生したリーマン・ショック後のイギリスは、金融機関の救済や景気刺激策等のために、赤字が膨らんでいました。2010年5月に首相に就任したデービット・キャメロン氏は、解散権を放棄するのと引き換えに、下院の会期を5年間の固定とした上で、福祉制度の見直しや財政の削減、増税等、痛みの伴う政策に着手します。その一方で、法人税の引き下げや海外企業・投資の積極的な誘致など、さまざまな経済政策を打ち出しました。

また2010年11月には「テック・シティ構想」を立ち上げ、官民を上げてフィンテック(IT金融事業)をバックアップしたことにより、ロンドンの東部地域がITベンチャーの集積地として成長。長年、欧州の金融センターとして機能してきたロンドンの強みにITを掛け合わせることによって、フィンテックがイギリス経済を牽引する重要な産業へと成長を遂げました。

イギリスでは、「たとえ国内企業が淘汰されようとも、市場を自由経済にゆだねる」という政策を採っています。それが、まるでテニスの英ウインブルドン大会の優勝者が、外国人で占められるようになっている状況と似ている、というので、これをウインブルドン現象と言います。こうしたことがイギリス経済の原動力になっているのですが、ブレグジット以後、これら企業の国外流出を招くのではないか、との懸念はあります。

Next: イギリス国内企業が「ブレグジットはチャンス」と捉える理由とは

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