優良企業の国外流出をどう防ぐ?
俣野:イギリスは、それに対する何か手立てを講じているのでしょうか?
荒木:今のところ、効果が高いのは減税ですね。法人税は、2015年4月より20%に下げられ、当時の先進国の中では非常に低い税率になりました。さらに翌年、より一層の減税方針が打ち出され、2020年までに17%という、シンガポールと同水準の税率になることが決まっています。アメリカがすでに今年から法人税を35%から21%へと下げていますが、それ以下ということです。
問題は、イギリスの関税協定がどうなるのかですが、同国が2019年3月29日にEU離脱後も、移行期間として2020年12月末までの期間が設けられることになっています。しかし、FTA(自由貿易協定)の交渉が上手くいかず、万一、イギリスからの輸出品に関税がかかるとなれば、製造業が国外に出て行くデメリットは十分考えられます。けれど、法人税が安いので、たとえそうなったとしても、本社機能はイギリスに残す企業が意外に多いのではないでしょうか。
危機とチャンスは、隣り合わせでやってくる
日本では悲観論で語られることが多いブレグジットですが、現地では企業を中心に、この機会をチャンスと捉える動きが活発化している、と言う荒木さん。次に、こうした動きが投資環境にどう影響してくるのかを、具体的にお聞きしていくことにしましょう。
【イギリスで狙い目の投資対象とは】
荒木:金融の分野にもいろいろありますが、不動産、保険業、ファンド系、銀行やそこから派生する先物、プライベートバンク、クリプトカレンシー(仮想通貨)関係等々、その多くがロンドンに集中しているのは、そのためのインフラが整っているからです。中でもバンクオブイングランドと保険のロイズは、それぞれの業界のトップに君臨していると言ってもいいでしょう。こうした縦横に張り巡らされた金融ネットワークが、今日のイギリスを支えている根幹なのです。
俣野:つまり、たとえブレグジットがソフトランディングできなかったとしても、それに耐え得るだけの蓄積がイギリスにはある、とお考えなのですね。
荒木:もともとEUは制度的にムリがありますから、このままではいずれ限界を迎えることになるでしょう。特にEUの保護主義は、自由競争を阻害し、社会の硬直化を招いています。イギリスが
大きな犠牲を払ってでも、ブレグジットを行う意味はここにあります。EUの制度から離れれば、より自由な取引が可能となりますから。
俣野:メリットがあるからこそ、進めているわけですね。ところで、荒木さんがイギリスでもっとも注目している投資とは何でしょうか?