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アメリカの老舗「シアーズ」倒産は、ダイエーと同じ理由? 日本企業が向かうべき道とは=吉田繁治

アマゾンほかネット通販に完敗

2010年代は、アマゾンを代表とする仮想店の、メーカー・問屋・小売から出品されるマーケットプレースが競合相手になっています。

マーケットプレースは、わが国の「楽天」のように、その商品をもつ商店、卸、メーカーが出品して販売し、代金の授受と宅配を主宰者が行う仮想店の仕組みです。これは、第4次のチェーンストアと言えるものです。

食品とサービス以外での、仮想店のシェアは、売上が7600億ドル(8.3兆円:イオンより大きい)に増えたアマゾンを筆頭に、米国の総消費の20%を超えて、今年も年率15%で増えています。世帯の商品購買の増加分に相当する、この3ポイント分(%)は仮想店に行っています。

有店舗(ゆうてんぽ)の、既存店売上(合計で約400兆円:日本の約3.3倍)が、前年比を割るようになったのは2015年からです。倒産したカテゴリーキラーのトイザらスや、商品価値が劣っていたシアーズ・Kマート連合は、もっとも大きく被害を受けています。いや、被害ではない。(1)選択される商品種類と、(2)買われる商品価値で、仮想店に敗北していたからです。

家電のベストバイは、アマゾンと同じ価格で売ると決め、店頭に実物はあるという商品戦略で蘇っています。ネット販売に対しても対策はあるのです。

コスト面から「生鮮食品」は実店舗が優位

生鮮を含む日常食品では、留守宅の再配送を含む宅配料が、段ボール1個当たり400円くらいかかるので、仮想店販売は進んでいません。1個単価が200円、1回の買い物が2,000円くらいにしかならないからです(筆者注:この宅配費のうち50%はドライバー費用)。

食品の顧客単価2,000円に対し、400円は20%です。平均小売りマージンである約25%のうち、20ポイントが消え、本部と物流の管理費を入れると、5%から10%の赤字になってしまうのです。

名産品のようには小売りマージンが高くない日常食では、宅配の採算がとれない。食品の宅配コストを下げるため、いろんな工夫がされていますが、いずれも失敗するでしょう。「誰かが400円の宅配費を負担しなければならない」からです。

わが国では、コストがかかるラスト1マイルで、部数と収入が減っている新聞の配達店の複合利用がいいと思いますが、いかがでしょうか。

食品を扱わなかったシアーズ

シアーズは、食品が売上の50%以上を占める日本型のGMS(ダイエー、イオン、イトーヨーカ堂、ユニーなど)とは違い、食品の販売は行いません。米国では、食品スーパーの大規模チェーン化と、商品のPB化が先に進んでいて、商品価値の競争優位を作ることができなかったからです。

米国の百貨店には、日本型の「デパ地下」はなく、商品価値で食品スーパーやウォルマートに対して競争劣位になる食品は、GMSでも販売していません。

日本のGMS(イトーヨーカ堂、イオン、ダイエー、ユニーなど)では食品が50%や60%と多く、百貨店でも総売上の15%付近の食品を売るのは、食品ス−パーのPB商品での、価値優位の程度がまだ低いからです。店舗数を増やし続けているコンビニとドラッグストアに商圏の食品需要を奪われた理由も、食品スーパーのPB商品の比較価値が、高くはないからです。

食品のないシアーズは、アマゾンを筆頭にした仮想店に、大きなマイナスの影響を受けています

Next: 仮想店への対抗策はあったのか? 米国で実店舗の大閉店が巻き起こる…

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