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アメリカの老舗「シアーズ」倒産は、ダイエーと同じ理由? 日本企業が向かうべき道とは=吉田繁治

栄光の小売業だった

シアーズは「栄光の企業」でした。カタログ販売からの伝統だった商品開発によってです。PB開発を大規模に行ったのは、世界の小売業で、シアーズが最初でした。ソフトとハード・グッズのGMSという業態を作り、リージョナル型S/Cの核店舗でした。

1973年には、シカゴに、当時は世界一だった442m、110階建ての本部ビルを作り、天空を突くビルが繁栄の象徴になっていました。小売業のメッカとして、50歳代以上の人には行かれた方が多いでしょう。商品の集客力の凋落が激しくなった1994年に売却され、今は、英国系保険会社のウィリス・タワーになっています。

シアーズは、80年代まで大型店化を図りながら、チェーンストアを目指したわが国の小売業の「到達モデル」でした。わが国で固有に作られたチェーンストア理論は、当時のポピュラープライのシアーズとJCペニーの方法の取材とベンチマークからのものでした。

店舗に行くと、1970年代までは、店舗と商品が輝いていました。米国の世帯所得は、日本の3倍から4倍で、われわれが買えない商品をふんだんに買っていたからです。米国の中間層の世帯の、生活の豊かさを象徴する店舗でした。住宅の広さは2倍で、プールもあったのです。

高学歴の社員が集まっていたのに…

シアーズは、就職人気でも1位であり、高学歴の社員が集まっていました。しかし彼ら・彼女らは、高能力ではなかった。「売上3兆円で(当時は)世界ナンバーワンのシアーズが、今後、顧客のために何を行うべきかという最適戦略」を、起案・実行することができなかったからです。目に見えない能力は、結果でしか判定できません。

1990年代に会議をもったことがありますが、スーツを着た幹部社員(女性も多かった)はエリート然としていました。現在の金融業のような感じ。古い欧州のような、官僚的社員ではなかった。休憩時間に喫煙所に行くと、数名の女性マネジャーが、「お互い、窮屈になったわね」と笑顔で話しかけてきました。

世界売上が50兆円という、未曽有の高みに上がっているウォルマートでも同じです。現在の商品力に慢心し、顧客にとっての商品価値を高めるマーチャンダイジングを続けないと、明日はない。

1980年代末に、先行していたKマートを追い越して、世界1の売上になったウォルマートも、幹部は学歴エリートです。

シアーズの経営幹部は、経営管理として、結果数字である財務管理を中心に行っていました。20年後に破産の理由になっています。財務管理とコストカットでは、顧客は増えないからです。

Next: 顧客を呼べないとどんなに延命しても無駄。どこで間違えたのか?

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