原因は2004年に破産したダイエーと同じ
2004年のダイエーの破産を思い出します。赤字から回復する見込みのない店舗を閉じても、20年はリース料を払い続けねばならない。
このリースの残債(実質的な債務超過)のため、ほぼ3分の2だった業績不振店の閉鎖ができず、借入は拒絶され、産業再生法の適用を受けて、事業の整理をしていました。2014年には、リースを続ける店舗ごとイオンに買収されています。
ダイエーの破産は、店舗資産の売却とコストカットはしても、商品価値(品質÷価格)を高めることができなったことが原因です。この点、シアーズと同じです。
「ダイエーにはなんでもあるが、買う商品がない」という外部の評論家が言うべき名言を中内氏が残しています。ビジョン(=目標)としての商品の方針を作り指導すべきCEOだったのに、無責任な言葉に思えます。創業者(Founderを自称)として、社員と会社を自分以外のものと認識していたからでしょうか。
シアーズも「なんでもあるが、買うものがない」に陥った
80年代の後半から、
- SPA型の開発輸入をする専門店ディスカウント(最初は80年代からのGAP)
- ホームデポやロウズのホームインプルーブメントストア
- ベストバイなどの家電ディスカウンター
- トイザらスのようなカテゴリーキラー
などが登場して店舗を増やしていました。SPAは、開発輸入の小売業です。
シアーズは、雨後の筍(=80年代のドル高後、価格で有利になった開発輸入)のように多く輩出した新興勢力との比較から、ダイエーと同じように「なんでもあるが、買う商品がない店舗」になっていたのです。
顧客が買う理由である商品価値(機能・品質÷価格)は、他店と比較されます。小売りの商品開発が多い米国では、PB商品の価値の差がつくと致命的です。
新興ディスカウントストアがトドメを刺した
シアーズのポピュラープライスより、一段(25%)も二段(50%)も低い価格のロワーポピュラー帯では、70代末から大型化し商品種類を増やしていた「Kマート」と「ウォルマート」の登場がありました。
急速な出店とともに、顧客は、安い価格の高い商品価値に吸引され、古くなった高いポピュラープライス帯のシアーズとJCペニーなどの、第二次チェーンストアのGMSの顧客を侵食していったのです。100年前からの、2度の倒産をしていたA&Pを筆頭とする食品スーパーが、第一次チェーンストアです。
第三次チェーンストアになるディスカウントストア群のターゲットも、商品のカラーコーディネートを特徴に加わりました。2005年ころからは、このロワープライスのさらに下にダイソーのような1ドルショップが店舗数を急速に増やしています(1万3,600店:2016年)。米国の価格は、下方に革新され続けています。日本でもデザイン化した3コインズ(300円ショップ)も登場しました。
シアーズが価格を上げたのではない。新しい安さが真空地帯に登場し、比較から、シアーズの価格が上がったのです。顧客はいろんな店舗に行き、たくさんの商品を見て買っているからです。商品価値が高い商品が陳列された店舗を選択するのは、顧客です。
店舗の側から見た、商圏や顧客管理という言葉がありますが、商圏の広さと来店する顧客数を決めているのは、商品価値です。
小売業は自店がいいと思って仕入れた、あるいは開発した商品に、自己満足していることが多く、この原則を忘れることが多い。
この自己満足は、来年に向かって開発すべき商品目標をもたないことから来ています。商品開発での、商品目標(その時理想とする商品)による管理(MBO)がないからです。