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アメリカの老舗「シアーズ」倒産は、ダイエーと同じ理由? 日本企業が向かうべき道とは=吉田繁治

課題は「商品」という認識がなかった

破産と繁栄は外部条件からやってくるのではない。顧客を吸引し、利益を高める商品の価値戦略を実行しないと、借り入れと資産売却で8年延命しても破産します。

シアーズは、米国のゼロ金利がなければ、09年か10年には破産すべきものでした。90年代のダイエーと同じ、敗北の商品戦略になって、財務管理のみになっていたからです。

コストカットや財務管理では、SPAの専門店ディスカウントとウォルマートやターゲットの商品力に吸引されて減った顧客を、奪回することはできない。当然のことです。

2005年には、シアーズが、Kマートを買収したと伝えられています。しかし、株式交換の内容を見ると、主客が逆でした。2002年の破産後の負債カットの期待で、1株が96ドルに上がってたKマートが、51ドルと低かったシアーズを併合していたのです。

瞬間の株価の差に目を付けた、Kマートの大株主のELS Investments(投資会社)が、現金の要らない株式交換という方法で、売上が410億ドル(4.5兆円)のシアーズを買収しました。

売上は、当時のKマート分の$230億(2.5兆円)が加わって水膨れしました。しかし株式交換という財務的な買収であり、必要だった商品の価値戦略の補強には、ならなかった。経営課題は商品問題という認識がなかったのでしょう。小が大を飲み込んだのは、株式市場が発達した米国で起こった資本の曲芸です。

2002年に破産したKマートより上のブランド力は残っていたシアーズという名前は残しつつ、親会社になったのは、Kマートでした。資本主義では、株主が会社のオーナーです。経営者(マネジャー=経営の支配人)は、株主の意思に従属します。

1980年代から「商品価値の戦略」が欠落

シアーズは、その後も業績(売上=客数、生産性、利益)の3要素で低迷しています。実はここに、MBOの方法での、経営管理の問題があったのです(※筆者注:ドラッカーが提唱した、目標による管理がMBO:Management By Objectives。経営とはMBOだとしました。当方も共感しています)。

「目標による管理」では、売上と利益が経営計画の目標にされていることが多い。売上目標は、財務的な目処にすぎないものです。売上は、商品価値の優位・劣位の結果です。結果は、仕事の目標にはできないからです。

決まった商品を売るセールマンや保険の外交では、売上は販売行動(=仕事)である商談数の目標になりえます。

しかし、PB商品を作って陳列する小売業では、売上は、商品の比較価値の結果です。売上と利益という結果を目標にするのは、経営管理の誤りです。製造業でも同じです。価値の高い新商品開発が、経営目標でなければならない

売上と利益目標は、アマチュア・ゴルファーがスコアを目標にすることと同じです、スコアは、ショットの結果でしょう。39を目標にしても、39で上がれるわけではない。ショットの向上を目標にて、練習すべきだからです。

Next: 商品価値が高ければ売れる。セブンイレブンとシアーズにある差とは?

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