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異次元緩和は失敗だった。クルーグマンの『Rethinking Japan』を読む=吉田繁治

7. 日本の潜在成長力の低さの原因は、人口問題だった

The approach also suggested that monetary policy would be effective if it had the right kind of credibility – that if the central bank could “credibly promise to be irresponsible,” it could gain traction even in a liquidity trap.(12)

これは、金融政策は正しい信頼をもたれるとき、有効になることも示唆している。中央銀行が、信用をもって無責任であると約束できるなら、流動性の罠の中でも、牽引力を獲得できるだろう。<翻訳(12)>
出典:Rethinking Japan – The New York Times

credibly promise to be irresponsible(信用をもって無責任)とは、クルーグマン特有の難しい表現です。具体的には、「インフレになった後も、量的緩和を続けるのが日銀だ」と国民から予想されることを言います。

もっと具体的には、黒田総裁は、インフレ目標2%が達成されたあとも、量的緩和を続けると予想されることを指します。

クルーグマンは、量的緩和が物価上げる効果を生むには、日銀が、通貨の価値を守る番人としては無責任だと思われることが必要と言っています。さらに重要な条件として、日本経済の潜在成長力が数%のプラスでなければなりませんが、実際は、潜在成長力1%以下です(2014年)。

But what is this future period of Wicksellian normality of which we speak? Japan has awesomely unfavorable demographics:(13)

Which makes it a prime candidate for secular stagnation. And bear in mind that rates have been very low for two decades, fiscal deficits have been high that whole period, and at no point has there been a hint of overheating. Japan looks like a country in which a negative Wicksellian rate is a more or less permanent condition.(14)

しかし、Wicksellianが言った潜在GDPの成長率と一致する金利は、いつ来るのか。日本は人口の生産年齢人口の面から、経済成長が低くなる、ひどく好ましくない人口構造をもっている。<翻訳(13)>

日本の永続的な停滞にとって、どちらが早く来るか。大きな財政赤字がずっと続く中で、20年も超低金利だったことを考えると、資金需要の過熱の時期は来そうもない。日本は、多かれ少なかれ、マイナスの自然金利が永久に続くように見える。<翻訳(14)>
出典:Rethinking Japan – The New York Times

ここも、クルーグマンのリフレ論のポイントです。日本経済のGDPの潜在成長力が、生産年齢人口の減少のためマイナスなら、日本の自然金利もマイナスになります。自然金利がマイナスなら、インフレで実質金利を例えば2%のマイナスにできても、効果は上がりません。

実質金利=名目金利0%-予想インフレ率2%=マイナス2%

自然金利がマイナス2%なら、実質金利のマイナス2%は、資金需要を増やす効果がない。住宅価格が2%下がる予想されているとき、ローン金利が仮にマイナス2%でも、住宅需要を増加させる効果はない。

「日本は、多かれ少なかれ、マイナスの自然金利が永久に続くように見える」(クルーグマン)恐らくこれです、住宅ローン金利が1%を割っても、事実、住宅需要は増えていません。1980年代は、ローン金利は7%と高くても、住宅購入は増加していました。住宅価格は、年率10%は上がると予想されていたからです。実質金利は、「名目金利7%-住宅価格の予想上昇率10%=マイナス3%」でした。

If that’s the reality, even a credible promise to be irresponsible might do nothing: if nobody believes that inflation will rise, it won’t. The only way to be at all sure of raising inflation is to accompany a changed monetary regime with a burst of fiscal stimulus.(15)

マイナスの自然金利の継続が実際のことなら、日銀が無責任になるという約束が信頼されても、何も起こらない。インフレになると思う人がいなければ、インフレは起こらないからだ。このとき、確実にインフレを起こす唯一の方法は、金融政策のレジームを、爆発的な財政刺激に変えることである。<翻訳(15)>
出典:Rethinking Japan – The New York Times

クルーグマンの変節は、ここです。

日本は、マイナスの自然金利になっていた。このため、日銀が量的緩和の継続で無責任になるという約束が信頼されても、何も起こらない。

「インフレになると思う人がいなければ、インフレは起こらないからだ」

では、日本は、どうしたらいいのか?

「このとき、確実にインフレを起こす唯一の方法は、金融政策のレジームを、爆発的な財政刺激に変えることである」

例えば、GDP比6%(30兆円)の公共事業を追加することだと言います。財政赤字は、現在の35兆円に30兆円を加えて65兆円になります。新規国債の発行も、65兆円になって倍増しますが、それは全部を日銀が買いとるということです。

しかし実際には、それは絶望的だとクルーグマンは言います。

Next: 8. 急激な財政拡張策は、日本の政策にはならないだろう

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