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不正だけじゃない「勤労統計」2つの欠陥、政府が思うよりずっと私たちの賃金は減っている=児島康孝

賃金水準の実態は…

では、実態はどうなのでしょうか。これは、会社を去った人の賃金を調査しなければなりません

つまり、元の会社にいた1,000人すべてを調査して、年収500万円が500人、平均年収で200万円が500人。これを平均して、「年収350万円が1,000人」というのが、実態を反映した数字です。月額で、約29万1,600円です。平均年収でも、大幅に150万円も下がっているわけです。

元の会社に残っている(リストラされていない)人の平均だけを計算すると、「変わりがない」という結果になります。

これが、大規模なリストラ後の「実質賃金」が、社会の実態からかけ離れている理由です。リストラされずに残った人の平均値ですから、高いのはあたりまえです。

それが、少々、上下しようが、名目賃金と実質賃金が物価の影響でどうなったとか、あまり大きな問題ではありません。

実態は、もっと極めて大幅な下落が起きているということです。

日産のケースでも同様

いま話題の「日産」のケースでも、今、日産にいる人の平均賃金は高いでしょう。しかし、日産をリストラされた人は大幅に賃金水準が下がっています。

いまの日本経済では、リストラ後には年収が3分の1とか、4分の1などもよくある話ですね。

ですから、今いる日産の人の平均賃金が高いとか少し上がったとか言っても、正確には、日本社会を反映していません。

リストラされた人の分を計算しなければ、「現実にはどうなのか」ということが見えてこないわけです。

ですから、実質賃金が上がったなどと言っていても、大規模なリストラ後の場合は、意味をなしません。

もっとも、リストラされなかった人の実質賃金さえもさらに下がっている状況というのなら、日本はより深刻なデフレ不況ということですが。

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