群を抜くTポイント会員と提携企業数
共通ポイントは業種の垣根を越えて消費者にポイントサービスを提供するもので、イギリスの航空会社ブリティッシュ・エアウェイズ(英国航空)のマイル政策を手本にしたともといわれている。
その共通ポイントを日本に根付かせたTポイントは、1業種1社にかぎって、それぞれの業種の有力企業と手を組んで会員を獲得していくという方針でスタートした。
たとえばニュースサイトはヤフー、コンビニはファミリーマート、石油販売はENEOS(エネオス)と手を組んで大発展を遂げた。共通ポイントのなかで、Tポイントの提携企業数の多さは群を抜いている。
街中にたくさんある提携店舗を訪れると、「Tポイントはお持ちですか?」と声をかけられ、加入を勧められるようになり、さらに知名度がアップし普及促進につながっている。
Tポイントの収益モデルといえば、ポイント会員の顧客情報を使ってグループ企業のマーケティングのサポートをすることである。
これを提携企業側から見ると顧客の囲い込みになるのだ。これがTポイントの提携企業が急増した理由の1つだった。
こうしていまではTポイントの会員数は6,800万人近くまでになっている。単純計算すれば、国民の2人に1人はTポイント会員ということになる。
ビッグデータの取り扱いをめぐる主導権争いか
そのTポイントの周辺がにわかに騒がしくなったのはなぜか、ファミリーマートを例にとって考えてみよう。
ファミリーマートがTポイントと提携した理由は、他の企業と同様、Tポイントをつければ、そのポイント欲しさにお客がたくさん来るからというもので、単純明快だった。
最初はそれでよかったのだが、しかし、ファミリーマート自身も顧客の囲い込みだけでなく、購買履歴などを使ってマーケティングで経営力の向上を図りたいと考えるようになった。
そこで、顧客情報の取り扱いをめぐってTポイントとファミリーマートの間にバッティングが生じたのではないだろうか。ファミリーマートが完全に情報を独占しようとしたかどうかはわからないが、かなり不満がたまっていたことは確かだろう。
SNSの普及にともなって、顧客情報がビッグデータとして価値を高めていく。そうしたなかで、同業他社の、例えばセブン・イレブンなどは自社のポイントであるnanaco(ナナコ)を使って新たにさまざまな試みを行っている。
ファミリーマートにとっては、同じポイントサービスなのに、Tポイントと提携しているがゆえにそれが自由にできない。だからTポイントとは少し距離をとりたいと考えていたのだろう。いずれ、ファミリーマートは、自分のポイントを持ちたいとさえ考え、7月には「ファミペイ」をリリースする予定である。
ヤフーとソフトバンクはもっと明確に、いまTポイントが担っている役割をペイペイや電子マネーのYahoo!マネーに向けようとしている。ヤフーで買い物をした際にペイペイにポイントを移して、Tポイントの比率を下げていくことになりそうだ。
要は外部(Tポイント)に委託するのではなく、できるだけ自前で賄おうというわけだ。