日銀は不自然な強気論
これに対して日銀は依然として2%の物価目標達成に向けて、現行の大規模な金融緩和を継続するとしていますが、景気判断については、周りから見て不自然なまでに強気を通しています。
特に、輸出、生産の足元の弱さを認めつつも、海外経済の基調は拡大方向で、内需も強いとして、輸出、生産の落ち込みは一時的で、また回復拡大に向かうと見ています。その根拠、説明は決して万全ではありません。
日銀にしては、足元の景気悪化で一部に追加緩和期待が台頭しているために、これを牽制するための強気論とも取れますが、政権の意向変化を考えると、日銀も自由度を確保して、いつでも動ける体制をとっておきたい、との思いがあるかもしれません。もっとも、景気、物価見通しの下方修正が予想される中で、日銀が出口を探ることには、今の市場では大きな認識ギャップがあるのも事実です。
政府幹部の日銀批判は、消費増税「延期」のため?
では、今なぜ政府幹部や日経新聞が金融緩和の見直し論を展開するのでしょうか。
客観的に大規模な金融緩和を長期間続けたことによる副作用を危惧するようになったとも思えません。アベノミクスの中核をなす日銀の異次元緩和を否定すれば、アベノミクスの否定につながり、自ら政策の失敗を認めるようなものです。それは考えにくいものです。
むしろ、政治的な意図がうかがえます。
つまり、うがった見方をすれば、消費税引き上げ再延期キャンペーンの一環という可能性があります。消費税引き上げを延期するなら、この3月が限界となります。準備を進めてしまってからの延期は、国民生活に混乱を招き、批判の的になります。すでにセットで進む幼児教育の無償化は準備が進んています。延期するならこの3月に決めておきたいところです。
ちょうどタイミングよく「景気懸念」が広がり、株価が下落すればよいのですが、このところ内外の株式市場は堅調で、増税延期の言い訳に使える「リーマン危機」並みの状況を想定しづらくなっています。