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「インドが日本式新幹線採用」朗報の裏で見捨てられゆく地方インフラ=三橋貴明

インドの高速鉄道計画で、日本の新幹線方式が正式に採用されることが決まりました。これについて作家の三橋貴明さんは、「日本の土木・建設産業の供給能力を維持するという意味で、ゼネコンなどが外国のインフラ整備を受注し、建設していくことは意味がある」と一定の評価をする一方で、遅々として進まない日本国内地方の新幹線整備の問題点を指摘します。

記事提供:『三橋貴明の「新」日本経済新聞』2015年12月18日号より
※本記事のタイトル・リード文・本文見出し・太字はMONEY VOICE編集部によるものです

インドが日本式新幹線採用――それは本当に「朗報」か?

遅々として進まない、日本国内地方の新幹線整備

インド高速鉄道計画について、日本の新幹線方式が採用されることが正式に決まりました。安倍総理の訪印中の12月12日に両国が発表したものです。日本側は、120億ドル相当の借款を供与します。

以前も書きましたが、日本の土木・建設産業の供給能力を維持するという意味で、ゼネコンなどが外国のインフラ整備を受注し、建設していくことは意味があることです。というか、国内にも外国にも仕事がない、という状況よりはマシです。

とはいえ、上記の類の報道に触れると、「日本国内の地方の新幹線整備が、なぜ遅々として進まないのだろうか…」と、悲しい気持ちになっているのです。

わたくしは今、山陰新幹線の取材で山陰地方にいます。

昭和48年に基本計画が決定したものの、凍結状態にある山陰新幹線(大阪-下関)ですが、リニア方式も含めた整備推進を目指す「山陰縦貫・超高速鉄道整備推進市町村会議」(会長・深沢義彦鳥取市長)が京都大大学院の中川大教授(交通政策)の研究グループに経済効果の試算を依頼しました。

結果、今年の6月に、「山陰リニア整備後の40年間の累計効果は18兆7900億円で、従来型の新幹線が整備された場合も3兆3789億円の効果がある」との試算が発表されました。

実は、昨日、会長の深沢市長にインタビューさせて頂いたのですが、中川教授の研究グループはかなり綿密に試算を行ったため、「突っ込みどころがない」形の数字となっています。というわけで、山陰新幹線を整備すると「儲かる」のです。

震災大国日本には地方への「分散」が必要

もちろん、震災大国である日本は、たとえ赤字になろうとも各地に新幹線を整備し、経済成長を促す必要があります。いつ、どこで大震災が発生するか分からない我が国では、国民が「分散」して暮らし、同時に「経済力(モノやサービスを生産する力)」を蓄積することが、国民全体の安全保障にとって極めて重要なのです。

つまりは、バラバラに暮らすことでリスク分散を図り、同時に経済的な結びつきを深め、経済規模を拡大しなければならないのです。そんなことができるのか、と思われたかも知れませんが、まさにそれを達成するのが新幹線に代表される交通インフラなのでございます。

というわけで、儲からない(経済効果、つまりはGDP拡大効果が小さい)場合であっても、我が国は地方にインフラを整備していかなければなりません。ところが、山陰新幹線の場合はGDP拡大効果が大きいのです(特に、リニアの場合)。それにも関わらず、東京の方では山陰新幹線整備の話が全く聞こえてきません。

Next: 何とか動き始めた北陸新幹線の新大阪延伸/日本の政治家に求めたいこと

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