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異次元の金融緩和と消費増税~国民に隠された財務省のストーリー=近藤駿介

財務省の狙いは「国民一人あたりの借金」を大きく見せること?

気に掛かるのは、「前倒し債」の発行増によって、一時的にせよ国債発行残高が増えることです。

日本の国債は「60年償還ルール」に基づいて償還されていくので、均してみれば「前倒し債」の発行増自体が国債発行残高を増やすわけではありません。

しかし、国債発行残高が838兆円(長期債務を加えると1,062兆円;2016年度末政府予想)に達し、国債だけで国民1人当たり約664万円の借金を抱えていることが繰り返し報じられるなかでの「前倒し債の発行増」は、一時的にせよ国民一人あたりの借金額を膨らませる効果を発揮するものです。

つまり、「前倒し債の発行増」は、本来の姿以上に国の借金を大きく見せることになるわけで、財政健全化のために2017年4月からの消費税引き上げ止む無しという世論形成を強めたい財務省の策略の1つであったとしても不思議ではありません。

間接的に国民に財政負担を強いている異次元の金融緩和が生み出している「市場のひずみ」を修正するという名目で「前倒し債」を増額し、それによって本来の姿以上に国家財政が逼迫しているように繕い、財政健全化という錦の御旗のものとに消費増税を正当化するというストーリーが描かれているのかもしれません。

このストーリーの中では、知らないうちにコストを払わされた上に増税を受け入れる無垢な国民は「悲劇のピエロ」でしかありません。

【関連】消費者物価の「上昇基調」は本当に異次元緩和の成果なのか?=久保田博幸

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近藤駿介~金融市場を通して見える世界』(2015年12月27日号)より
※記事タイトル、本文見出し、太字はMONEY VOICE編集部による

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ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動してきた近藤駿介の、教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚を伝えるマガジン。

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