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安田倉庫の株価は、実質資産の半分以下?ユニゾ急騰で注目される資産バリュー株を探せ=栫井駿介

680億円の株・不動産が270億円で売られる

ランキング1位の安田倉庫は270億円の賃貸用不動産簿価に対し、時価は470億円と200億円もの含み益がある状況です。

出典:安田倉庫 有価証券報告書

出典:安田倉庫 有価証券報告書

さらには、投資有価証券420億円(うちヒューリック株330億円)、現預金70億円があるので、減損の可能性が低いこれらの資産だけでも470+420+70=960億円になるわけです。

そこから有利子負債280億円を差し引くと、「実質純資産」は680億円となります。

安田倉庫の時価総額を確認してみると、執筆時点(2019年8月21日)で270億円です。

出典:Yahoo!ファイナンス

出典:Yahoo!ファイナンス

680億円のものが270億円で売られている―今の安田倉庫はこのように割安な状態なのです。

ユニゾのようなカタリスト(買収)は起こりにくい

では、安田倉庫を今買っていれば株価が上がると保証できるかと言えば、決してそんなことはありません。いくら安いからと言って、買う人がいなければいつまで経っても取引値は上を向かないからです。

割安なのにいつまでも株価が上がらない現象をバリュートラップと言います。

冒頭のユニゾHDのケースでは、HISやファンドがTOB(株式公開買い付け)をかけ、買収に動いたことが株価上昇のきっかけとなりました。このような材料を「カタリスト」と言います。

ところが、安田倉庫の有価証券報告書を見ると「買収防衛策」を導入していることがわかります。これは、敵対的な買収者が現れた場合に、第三者に新株予約権を割り当てることで、買収者の持ち分を下げるものです。

これをされたら、買収者は引き下がるか訴訟に出るしかありません。そこまでして買収するにはかなりの労力が必要ですから、敬遠されます。ちなみに、ユニゾHDは買収防衛策を導入していなかったことが買収合戦の遠因となりました。

また、株主構成を見ても非常に安定していることがわかります。身内や名だたる大企業だけで50%近くを占め、敵対的に過半数を取得することは不可能に近いと言えます。

出典:安田倉庫 有価証券報告書

出典:安田倉庫 有価証券報告書

株主構成関しても、ユニゾHDは失態を犯していました。もともと興銀系(みずほグループ)の会社なのですが、度重なる公募増資により安定株主の割合が減少し、株主構成が不安定になっていたのです。まあ、自業自得ではあります。

他の倉庫会社も似たような状況ですから、ユニゾHDのような買収合戦は起こりにくいと言えます。すなわち、「カタリストが発生しにくい」のです。これまでの株価を見ても、割安感で一時的に上がっては、継続的な買いが入らずもとに戻るということを繰り返しています。

安田倉庫<9324> 月足(SBI証券提供)

安田倉庫<9324> 月足(SBI証券提供)

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