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反中国を標榜したデモの混乱のなか、アリババが香港市場への上場を果たした背景=田代尚機

米中貿易戦争が冷戦に向かえば、世界の金融市場にダメージ

EU諸国はどうだろうか。韓国、ASEAN、中東、中南米、アフリカ諸国はアメリカと同調するだろうか。

民主化、反中国を標榜した若者のデモで混乱を続ける香港市場においてアリババの上場を成功させたのは、グローバル投資家であり、グローバル金融機関である。彼らの多くは、自由化、国際化が自分たちの利益に繋がり、それは世界の繁栄、世界の平和にも繋がると考えているはずだ。もし、米中貿易戦争が長期化し、冷戦に向かうとすれば、金融業界や金融市場が成長機会を失い、大きなダメージを受ける。アメリカも困る。だから、そうならない可能性の方が高いと考えている

アリババを語るうえで、忘れてはならないのはソフトバンクである。

ソフトバンクの孫正義会長は2000年、設立後わずか1年足らずでアリババの将来性を見抜き、2,000万ドル(22億円)の投資を行った。2004年には6,000万ドル(66億円)の追加投資を行うなど、成長の各ステージで追加投資を行っている(一部、売却もある)。

上場後も、ソフトバンクはアリババの圧倒的な筆頭株主となっており、株主構成(追加割当権を考慮せず、主要株主の売却がない場合、目論見書より)をみると、公開部分が発行済み株式総数の66.0%あるが、ソフトバンクは25.2%を占めている。第2位株主は創業者である馬雲前CEOであるが、その比率は僅か6.0%に過ぎない。

アリババの急成長でもっとも大きな利益を得たのはソフトバンクであろう。

日本のマスコミは、ビジョンファンドの投資先である共有オフィスのウィーワーク、配車サービスのウーバー・テクノロジーズへの投資の失敗を盛んに報道しており、孫正義CEOの資質に言及するところまである。

投資に失敗は付き物だ。ベンチャー投資など“センミツ”の世界である。1,000件調査して、3件優良企業が探せればよい方だ。残念ながら、先のことなどわかるはずがない。もちろん、投資を決める際には、事業計画、市場環境、財務内容から経営者の資質に至るまで調査するのだが、いくら精緻に調べ、分析したところで、大した意味はない。最後にモノを言うのは“経営者の頑張り、事業への執念、成功への執着”であり、だから、経営者の質を見抜く力が重要だ。孫正義会長にはそれがある。だからこそ、創業後間もない一中国民営企業にまとまった資金を投資できるのだ。

あらゆる投資で当てはまることだが、大きなリスクを取らない限り、大きなリターンは得られない。日本人全体に欠けているのは、大きなリスクをとるということ、大きなリスクを取る人をリスペクトするということである。小さな失敗を咎めているのであれば、みんな、小さなリスクしかとろうとしなくなる。それでは小さなリターンしか得られないということになり、社会は委縮する。それがこの約30年間、日本経済がほとんど成長しない最大の要因だと考えている。

投資対象として、アリババをどう考えたらよいのだろうか。

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image by : Alibaba / Shutterstock.com

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中国株投資レッスン』(2019年12月6日)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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