研究開発からスタートアップへの政策の大転換!?
一方で、時代はハードウェアからソフトウェアに転換しつつあり、GAFAと呼ばれるグローバルな巨大ネット企業が誕生していく中で、いわゆる従来型の研究開発投資だけでは、経済成長に必ずしも繋がりにくいという面も、徐々に増えてきています。
冒頭で紹介した日経新聞の記事にもこのような記載がありました。
新税制で必要となる財源は、大企業の交際費支出に適用している減税措置を大幅に縮小して捻出する。研究開発税制など既存の優遇税制については、十分な投資をしなければ優遇を受けられないよう基準を厳格化する。
今回のスタートアップ投資減税を実現するための財源は、「研究開発減税の財源の一部を減らすことで捻出する」という意味です。
出典:同上
これを見る限り、今回のスタートアップ投資減税は経済産業省が主導したものだと思われますが、私はこの財源移管に、政府としての明確なイノベーション政策の転換を感じました。
これまでの日本は、大企業による研究開発によって技術的な優位性を保ってきたというのが大雑把な全体感だと思いますが、今後は「スタートアップ主導のイノベーション」にギアチェンジをしていこうという、政府の意図なのではないかと思います。
今後起こりうること、我々がすべきこと
日本のスタートアップ投資環境を見ると、シリコンバレーなどに比べると、大企業はCVCによる投資が割合的に圧倒的に多いのが特徴です。
今回のスタートアップ投資減税によって、この流れはおそらくかなり加速すると言えるでしょう。スタートアップへの資金の流入を増やすという意味においては、日本の強みであるCVCからの投資をさらに加速させるという、強みにフォーカスした政策だとも言えます。
従って、今後起こりうることとしては、日本の大企業CVCからの投資がさらに加速される、と考えるのが自然でしょう。
一方で、短期的には大企業やCVCからの投資が加速しますが、大企業はこれまで自社における研究開発にフォーカスしてきた会社が多いため、必ずしもスタートアップへの投資に熟練しているとは限りません。
従って短期的に見れば、大企業CVCからの投資が失敗に終わるケースも多々出てくるかと思われます。
我々がすべきことは、そういった短期的な失敗を批判するのではなく、もう少し俯瞰的、中長期的に見て、どのように強いエコシステムを作っていけるのか、という点を議論する事だと個人的には思っています。
スタートアップ投資は、一つの巨大なEXITが全体のゲームを大きく変えてしまうほど影響があるので、小さな失敗がたくさんあっても、確率論で大きな大ヒットが出ることで、トータルとしては大きなプラスになっていくというケースが多々あります。
この記事を読んでくださった読者の方、そしてメディアの方は、短期的な失敗を批判するのではなく、是非俯瞰的に中長期的に、建設的な議論を一緒に続けていけるような役割を担って頂ければ、個人的にも嬉しいなと思っています。
※本記事は有料メルマガ『決算が読めるようになるノート』2019年12月24日号の抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
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『決算が読めるようになるノート』 2019年12月24日号『スタートアップ投資減税が素晴らしいと思った件』より抜粋
※記事タイトル・本文見出し・太字はMONEY VOICE編集部による
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