fbpx

過労自殺「肥後銀行事件」を振り返ってわかった企業側が取るべきリスク対策=奥田雅也

役員に対する懲罰的な意味合いが強い制度

「株主代表訴訟」について確認しておくと、ウィキペディアに以下の記載があります。

株主代表訴訟(かぶぬしだいひょうそしょう)とは、日本の株式会社において、株主が会社を代表して取締役・監査役等の役員等に対して法的責任を追及するために提起する訴訟のことである。会社法では、責任追及等の訴えという。

出典:株主代表訴訟 – Wikipedia

簡単に言えば、役員等が業務執行において会社へ損害を与えたことにより、棄損した株価(財産)を株主として損害賠償を求める制度です。

株主代表訴訟では、役員が会社へ賠償をするので、株主は直接的に金銭が手に入る訳ではありません…。

株主代表訴訟は上場会社ではたまに起こされており、有名な事件もいくつかありますので、ご興味のある方は、「大和銀行事件」「オリンパス事件」「東芝事件」などを検索してみて下さい。

今回、冒頭にご紹介した「肥後銀行事件」では、第1段階で遺族は銀行へ過重労働として訴え、第2段階として株主として役員が銀行へ与えた損害の賠償を訴えています。

第1段階目の賠償金は遺族に支払われますが、第2段階目の賠償金は銀行へ支払われます。

株主代表訴訟は、役員に対する懲罰的な意味合いが強い制度と言えるでしょう。

企業側も対策が必要になる

この事例を聞いて怖いと思ったのは、株式公開企業や複数株主がいる企業では、今後、起こりうる事例だと思ったからです。

さらに言えば、事業承継対策として従業員持株会(以下、従持会)を作った場合、規約によっては簡単に従業員が株主代表訴訟を起こすことが可能です。

もちろん、従持会がなくても資産形成やオーナー一族の自社株対策として社員に自社株を持たせた瞬間に、株主代表訴訟リスクが発生します。

冒頭の肥後銀行事件の様に、労務トラブルから株主代表訴訟へ発展するリスクは十分にはらんでいますので、総合的な観点でのリスクマネジメントは不可欠ですね…。

Next: 総合的なリスクマネジメントが必須?1つのトラブルが危機に直結する

1 2 3
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー