fbpx

日本の不動産は落ち目? EU離脱後も上昇を続けるイギリス不動産と何が違うのか=俣野成敏

なぜ人口減少が見えている日本で不動産価格が上がっている?

俣野:日本は今後、人口が減少することがわかっているにも関わらず、なぜ不動産価格は値上がりを続けているのでしょうか?

織田:これは単純な話で、要は買い手がいるからです。その買い手が誰かと言うと、ほとんどが“銀行の貸し先”です。ですから、「買い手は銀行がつくっている」と言うこともできます。

本来、不動産投資をリスクとリターンの関係から考えた場合、物件の購入希望者は、頭金として、だいたい1~3割の自己資金を出さないと融資してもらえません。これは、日本でも世界でも基本は同じです。

ところが、2016年2月から、日銀がマイナス金利政策を始めました。この政策によって、金融機関は、日銀の当座預金にお金を置いておくと、手数料を取られるようになりました。

銀行は、お金を貸さざるを得ない状況に追い込まれたわけです。

そのため、一時は年収数百万円のサラリーマンでも、頭金なしのフルローンで億単位の投資用物件を購入できた時期があったようです。現在は、金融庁の指導もあって、正常な状態に戻りつつありますが。

日銀の黒田東彦(くろだはるひこ)総裁が、2012年から始めた異次元金融緩和政策によって、大量のお金が市場に放出された結果、お金の行き先は、主に3つに分かれました。「海外市場」「国債」「不動産」の3つです。

海外市場については、たとえば2018年5月に発表された、アイルランド製薬大手シャイアーを買収した武田薬品の例が挙げられます。

買収するに当たり、武田薬品はJPモルガンチェース銀行、三井住友銀、三菱UFJ銀、みずほ銀、農林中央金庫、三井住友信託銀行から融資を仰ぎ、後には国際協力銀行(日本の政策金融機関)も加わりました。7兆円弱もの巨額買収が実現したのは、これだけの金融機関が出資に応じたからです。

2つ目の国債に関しては、日銀が国債を購入する代わりに市場に資金を供給していることは、ご承知の通りです。そして、3つ目が不動産です。

私たちは普段、銀行に資金を置いています。これを預金と言い、銀行にとっては「資金を調達している」状態に相当します。ですから、彼らは私たちに対して、調達金利を支払わなければなりません。それが、預金金利に当たります。

今の金利は、私たちにしてみれば、たった0.001%かもしれませんが、銀行にとってはコストですから、手持ちの資金を運用しないと赤字になります。

マイナス金利の導入前、金融機関は日銀の当座預金に預け入れをしているだけで、0.1%の利息がつきました。当時は、日銀の当座預金にお金を入れておきさえすれば、調達コストはペイできたのです。

そもそも銀行は、お金を貸さなければ商売ができません。なのに、それをせずに、お金を当座預金に眠らせておいた理由は、バブル崩壊で長い間、資金を貸し出せる状態ではなかったからです。

ところが、せっかく景気が持ち直してきた後も、銀行はリスクを取って資金を貸し出そうとはしなくなってしまいました。日銀の当座預金にお金を入れておけば利益が出るので、リスクを厭う気持ちがあったのでしょう。

マイナス金利とは、ある意味、日銀の荒療治だったわけですが、これによって銀行は、貸さなければ確実に赤字に陥ります。そこで、銀行の資金が向かった先というのが、担保が取れる不動産でした。

日本の不動産投資を過熱させた要因は、ここにあったのです。

俣野:今の日本の不動産市場の活況は、実態に即したものでなかった、というのであれば、いずれ値崩れを起こす危険性があるのでしょうか?

織田:「いつ、この市場が崩れるのですか?」と問われたならば、その答えは「銀行がお金を貸さなくなった時」です。その時が、日本の不動産マーケットが崩れる時でしょう。

結論:現在の日本の不動産市場の活況は、見せかけに過ぎない

Next: なぜEU離脱後もイギリスの不動産は盛り上がっている?

1 2 3 4
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー