fbpx

日本の不動産は落ち目? EU離脱後も上昇を続けるイギリス不動産と何が違うのか=俣野成敏

2. EUを離脱したイギリスの不動産が盛り上がっている理由とは

<ポイント:不動産投資で大事なのは「需給バランス」>

俣野:ここまでのお話をまとめますと、「買い手が大勢いるからといって、その市場が必ずしも将来性があるとは限らない」ということになるかと思います。

それでは、不動産投資を検討する際の見るべきポイントを、お話いただけますでしょうか?

織田:プロが注視しているのは、基本的に「需要と供給」だけです。いわゆる需給バランスを見ています。当然ながら、需要が供給を上回っていれば、価格も上がっていきます。需要が一定なら価格も安定しますし、供給が需要を上回れば価格は下がります。

大多数の人が不動産投資で失敗している要因は、その多くが需要と供給の中身を見誤っているからに他なりません。

俣野:その一例が、先ほどお話しいただいた日本の不動産市況ということですね。

反対に、需給バランスが良いのがイギリスのロンドン不動産、ということでしょうか?

織田:はい。目下、それ以外の海外地域は、ほとんどが供給過剰になっています。先ほど挙げた世界3大都市の中でも、もっとも価格が安定しているのがロンドン不動産です。需要が常に供給を上回っているからです。

これには、いくつかの要因があります。まず、イギリス人は持ち家派の人が多いということ。持ち家比率的には65%前後と、日本の61.2%(2018年、総務省)と大差ありませんが、日本人のように「一生に一度の買い物」とはなりません。

たいていのイギリス人は、ライフスタイルに合わせて数回、購入と売却を繰り返します。それを可能にしているのが、イギリスの住宅価格の上昇です。この30年ほどの間に、イギリス全体で見ても、住宅価格は3倍以上に値上がりしています(Web版『建築討論』2016年夏号)。

需要が供給を上回っている要因の2つ目は、大ロンドン開発計画です。話は、18世紀末の産業革命までさかのぼります。イギリスが他国に先駆けて、いち早く産業革命を成し遂げると、ロンドンは急速に都市化が進行しました。

ロンドンには、職を求めて全国から人が押し寄せ、工場による環境汚染や人口過密による住環境の悪化、劣悪な衛生状態、貧困や犯罪の蔓延など、今日見られる都市問題が、一足早く噴出しました。

やがて人々の間で、環境の劣化に対する問題意識が芽生え、これらに触発された田園都市論やグリーンベルト構想が持ち上がります。

グリーンベルトとは、都市の無秩序な開発と拡大を阻止することを目的に、「街の周りを緑地帯で覆う」という考え方で、1938年にグリーンベルト法が可決。1944年には、大ロンドン計画に基づいた土地開発がスタートしました。

現在このグリーンベルトは、ロンドン以外の都市にも複数採用されています。

このように、イギリスでは産業と自然、住環境とのバランスを考慮した開発が、早くから行われてきました。これが、ロンドン不動産の需要が高くても、供給を増やせない理由です。

さらに、イギリスでは景観等の問題から、基本的に建物を上に延ばすことができない上に、年代物の建物は保護対象になっている場合があります。

つまり土地がなく、需要に応じた供給を増やせないということが、ロンドンの不動産価格が一定で落ちない理由なのです。

Next: 理由はもう1つ? なぜロンドン不動産では需要が供給を上回っているのか

1 2 3 4
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー