諸外国のような都市封鎖は「不可能」
もう1つ関連する法令として、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)があり、新型コロナウイルスの感染がさらに広がった場合に備えて、すでに感染症法の一部を改正、施行しています。
ロックダウンに関連する条文は、以下の33条になるかと思います。
第三十三条 都道府県知事は、一類感染症のまん延を防止するため緊急の必要があると認める場合であって、消毒により難いときは、政令で定める基準に従い、七十二時間以内の期間を定めて、当該感染症の患者がいる場所その他当該感染症の病原体に汚染され、又は汚染された疑いがある場所の交通を制限し、又は遮断することができる。
こちらは強制力があり、それに反した時は50万円以下の罰金という罰則規定もあります。
しかしながら最大72時間という期限を設定されており、この法律をもって諸外国のようなロックダウンを行えるかという点については、結論としては無理ということになります。
要するに日本においては、現行法では長期(72時間を超える)の強制力のあるロックダウンは出来ず、都道府県知事による要請しかできない、ということになります。
もちろん要請であるから効果が全くないと言うつもりはありません。
緊急事態宣言が行われ、都道府県知事から今よりもより強い形で要請が行われれば、それに反した行動を行う人は社会的な批判や制裁を受けることになり、感染拡大の抑制には一定の効果はあるとは思います。
しかしながら諸外国で行われているようなロックダウンとは違った形になります。
政府が損失補償案をまとめるのが先
また緊急事態宣言を行い、それに基づいて都道府県知事が要請を行う場合、法律上は要請ですが、今までの要請のように、それに伴う損失を政府が補償しないというわけにはいかなくなると思います。
よって緊急事態宣言を出すのであれば、損失の補償案をまとめてから宣言する必要があります。
例として、イギリス政府は3月20日、休業を余儀なくされる従業員の給与の80%を、1人当たり月2,500ポンドを上限に政府が肩代わりするとしました。3月1日に遡り、当面3カ月間実施する(今後延長の可能性もあり)と決めています。
アメリカは総額約220兆円の緊急経済対策で、現金給付等で補償を行おうとしています。
日本においても、緊急事態宣言を出して経済活動を宣言するならば、相応の補償が求められてくるのではないかと思います。
アメリカでの感染者の急拡大を目のあたりにしており、東京でも感染者数が日々増えてきているので、早めに緊急事態宣言をし、ロックダウン(日本では法的にはあくまで要請だとしても)をして感染を防ぐべきだという意見は正論です。
しかしながら、ロックダウンを行うことで経済活動のかなりの部分が止まるわけですから、補償なしで行えば、結果として多くの自殺者を出すという結果になりかねません。
ロックダウンを行うべきだというのは簡単だが、行政の立場としては当然補償と一体でなければと考えるのは当然であると思います。