全米の新規失業保険申請件数が660万件に急増。前週から2倍となりましたが、つい最近までは20万台でした。数字の大きさに驚くだけでなく、意味を考えてみましょう。(『高梨彰『しん・古今東西』高梨彰)
※本記事は有料メルマガ『高梨彰『しん・古今東西』』2020年4月3日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
日本証券アナリスト協会検定会員。埼玉県立浦和高校・慶応義塾大学経済学部卒業。証券・銀行にて、米国債をはじめ債券・為替トレーディングに従事。投資顧問会社では、ファンドマネージャーとして外債を中心に年金・投信運用を担当。現在は大手銀行グループにて、チーフストラテジスト、ALMにおける経済・金融市場見通し並びに運用戦略立案を担当。講演・セミナー講師多数。
「突飛な数値」の意味を考える
本日4月3日夜には、アメリカの雇用統計が発表されます。
毎月のお祭り的イベントでして、突飛な数値が出ることもお約束。しかし、今回公表される3月分から暫くの間、思いっ切り突飛な数値が続きそうです。経済指標にも右往左往される季節にもなりそうです。
突飛な数値が出たとき、その値にただビックリしがちです。
でも、その数値がどんな意味があるのか、一つ一つ確認することがより大切です。
例えば、昨日、新型ウイルスの感染者が世界で100万人、犠牲者は5万人という推計が出て来ました。一方、東京では1日で97人の感染確認とのこと。
これらの数値がどれだけ大きいのか。そのためには「世界の人口」や「東京都の人口」を知ることが大切です。
大雑把に言えば、世界の人口は76億人、東京は1,400万人弱。
これらの値も見ておけば、「世界で100万人」も少しは客観視可能かと。少しだけですけど。
アメリカの新規失業保険申請件数「660万件」に急増
さて、全米の新規失業保険申請件数が660万件に急増したとのことです(編注:3月28日までの1週間で664万8,000件。これまでの過去最多は1982年10月の69万件で、リーマン・ショック後でも2009年3月の66万件が最多となっていました)。このデータは3月28日の週のものです。3月21日の週は330万件でした。
これだけ見ると、「おっ、2倍すごいな」となります。
しかし、1年前は21万件。と言いますか、つい最近まで20万台の数値が並んでいました。1年前の比較だと30倍超です。
では、660万件の新規申請件数は失業者全体からみると、どれくらいの多さなのでしょう。
というとこで、アメリカの労働者数、失業者数を過去の雇用統計等から持って来ます。
アメリカの人口3.3億人に対し、子供やお年寄りを除いた人口は2.5億人、労働力として計算される人口は1.6億人です。そのうち失業者数は600万人弱、失業率は3.5%(直近だと578.7万÷1.64億人)となっています。
この値はこのところ安定的でした。この中で、新規失業保険申請件数は20万ちょっと、ということです。
いきなり申請件数が660万件と、これまでの失業者数を超えてしまっています。この分がすべて失業者となっただけで、失業率は7%を超えます。
この傾向は始まったばかりです。そのうち10%を超えることもかなりの高確率。一方、これらの数値を予め並べておけば、突飛な数値に対する備えも可能です。
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