日本人富裕層の日本脱出計画が進む
そんな中、この政策に「NO」という富裕層の日本脱出が進んでいます。
庶民はひとり一律10万円の給付に喜び、その使い道を考えます。しかし、このお金はいずれ誰かが払う必要があるのです。それは、富裕層であり、子ども達です。
富裕層の間では日本円から米ドルや金の現物に変えたり、銀行を分けたりする流れが加速しています。ロジャーズ氏は繰り返し、「10歳の日本人の子どもなら日本から脱出したほうがいい」と言います。
子ども達がツケを払うことになるのです。
ジム・ロジャーズの新刊『ジム・ロジャーズ 大予測:激変する世界の見方』のインタビューアーであるモンラッシェ・キャピタル、シニア・バイスプレジデントのアレックス・南レッドヘッド氏はシンガポール在住で、ファミリーオフィスサービスを行っています。ファミリーオフィスとは富裕層の移住や教育など生活周りから資産運用や税務アドナイスなども行うサービス業です。
アレックス・南レッドヘッド氏によると、新型コロナウィルスの発生後に日本を脱出してシンガポールを目指そうと考えている人が増えていると言います。FPである私も富裕層から移住や資産運用の相談をここ最近で何件か受けています。
3月中旬に日本国債は暴落をし、長期金利が上昇する局面がありましたが、無限にお金を擦り続けていては、国内で国債が消化できない日が来る可能性が高まります。
ロジャーズ氏は、市場関係者が中央銀行を信用しなくなれば、MMTも誰も救ってくれないと言います。現在、日本円やスイスフランはかろうじて強さを維持していますが、それもいつまで続くのか分からないことです。
今回のコロナ経済対策は、日本国債の格付けにも影響を与える可能性が高いでしょう。
ロックダウンが長引けば、財政政策をしても焼け石に水
ロジャーズ氏は、ロックダウン(都市封鎖)が長期化すれば経営危機に陥る企業は間違えなく増え、日本企業も例外ではないと言います。政府が企業向けや個人向けに行っている財政政策は綱渡りでしかなく、限度があるからです。
「こういった状況で一番弱い企業は債務の多い企業だ。逆にキャッシュに余裕のある会社は、生き延びることができる。テクノロジー産業など、比較的新しい産業は債務が少ない」。
ロジャーズ氏は続けます。
「日本では、当初、中国との関係が深い企業が受けるダメージが大きいと思われていた。ユニクロや無印良品など、小売りや飲食店などで中国に進出している企業は、現地店舗が休業を余儀なくされた。また、観光やインバウンドで好調だった企業も大きな痛手を受けている。訪日客の減少は、ホテルチェーンや百貨店、ドラッグストア、化粧品業界などにも影響している。しかし、いまや混乱は中国にとどまらず全世界に拡大している。痛手を被る企業の範囲は広がっている」。
シンガポールでは自粛が6月1日まで延長されましたが、日本の多くの自治体で緊急事態宣言も延長する方向性です。