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だからマイナンバーカードは嫌われる。コロナ便乗・ポイント還元でも普及しないワケ=岩田昭男

10万円給付に便乗したマイナンバーカード

政府は4月20日、新型コロナの緊急経済対策として、住民基本台帳に記載されている全国のすべての国民に対し、「特別定額給付金」として一律10万円を給付することを決定。給付金の申請は、新型コロナ感染防止のため、市区町村などの自治体の窓口では原則として受け付けず、郵送もしくはオンラインで行い、オンライン申請にマイナンバーカードを使うようにしたのだ。

郵送で申請する場合は、世帯主が自治体から送られてきた申請書類に必要事項を記入し、本人確認のための運転免許証や銀行の通帳の写しを返送すると指定の銀行口座に、各世帯の人数分の給付金が振り込まれる。

これに対してマイナンバーカードを持っていれば、自治体から申請書が到着するのを待たずに、パソコンやスマートフォンを使って専用サイトからすぐにオンライン申請ができる。

このため、すこしでも早く給付金をもらいたいと新たにマイナンバーカードの発行を申請する人が相次いだ。

使えないマイナンバーカード

ここまでは政府の思惑通りである。

ところが、マイナンバーカードを申請するには自治体の窓口で手続きをしなければならず、しかも、申請してからカードが発行されるまでに1~2か月かかるという。これでは何のためのオンライン申請かわからない。

すでにマイナンバーカードを持っている人はどうかというと、暗証番号を忘れたり、5回続けて間違えてしまいロックされてしまう人も出てきた。

再設定するには自治体の窓口に行かなければならず、マイナンバーカードを新たに申請する人とともに行列ができて、新型コロナ感染リスクが高い3密状態を生んでしまったのである。新型コロナの経済対策としての給付金を受け取るために、コロナに感染してしまってはまさに本末転倒で、笑うに笑えない。

なんとかオンライン申請にこぎつけても、今度は名前や住所の入力ミスが多く、目視で行う住民基本台帳の情報との照合に自治体職員が忙殺されることになった。

自治体業務の効率化どころか、逆に非効率化を進めたようなものだ。このため、マイナンバーカードによるオンライン申請を中止し、郵送の申請だけに限定する自治体が続出した。

この騒動では、自治体も国民同様に被害者である。自治体が住民に対して、郵送のほうがオンラインより早く申請手続きが完了し、早く還付金が振り込まれるとアナウンスするにいたっては、もはや喜劇としかいうほかない。

あるいは、屋上屋を重ねた個人情報管理システムの弱点と弊害が露呈した悲劇であるともいえる。

国もわれわれ利用者も、莫大な税金を投じてつくりあげたデータ管理システムを17年間もただほったらかしにしておいたツケがいま回ってきたといえるだろう。

Next: 実は台湾や中国では、個人を特定できるマイナンバーカードが感染拡大阻止――

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