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だからマイナンバーカードは嫌われる。コロナ便乗・ポイント還元でも普及しないワケ=岩田昭男

感染拡大防止に一役買ったカード

こうして日本のマイナンバーカード活用は大失敗に終わったわけだが、新型コロナの感染拡大が始まった今年の2月ころから、実は台湾や中国では、個人を特定できるマイナンバーカード型の多機能カードが感染拡大阻止に大いに役立つといわれ始めていた。

各国のカードはそれぞれ異なっているが、その多くがICチップ搭載の身分証明や健康保険証の機能を付けたり、スマホに入れることができる多機能カードである。

たとえば台湾では、国民が自販機で一定期間に決められた枚数だけマスクを購入することができる。そのときに使われるのが「健康保険カード」で、このカードを身分証明書がわりに使って個人を識別している。

また、韓国や中国では買い物やサービスの利用のほとんどがキャッシュレス決済のため、スマホに載せたアプリを使い、感染者の行動をトレースして、彼らの位置情報をはっきりさせることで、クラスターと呼ばれる大規模な集団感染の発生を未然に防ぐことに成功したという。

マイナンバーに銀行口座をひもづける

こうした情報がマスコミで紹介されるようになると、これまで個人情報を国が管理することに反対し、個人情報の提供を拒んできた人たちの考え方が少し変化し始めた。

「感染拡大病防止に役立つのなら多少のリスクは目をつぶろう」「ある程度、個人情報が行政に把握されるのもやむを得ない」などと考えるようになったのだ。

これは大きな変化である。

この国民意識の変化を感じ取った自民党の若手議員のなかから、マイナンバーに銀行口座をひもづけて、今後、大きな災害が起きたときに迅速に現金給付が行えるようにするという案が浮上してきた。近く議員立法で法案の成立を図る考えだという。

今回の10万円給付の失敗を教訓にしようというわけだが、現政権はカードを普及させるために何でも利用しようとしてきた。キャッシュレス決済のポイント還元は消費税増税とだき合わせだったし、10万円給付にしても、コロナ禍に便乗してマイナンバーカードの利用を促した。やり方があまりにもあざとい。

マイナンバーカードに個人情報を盛り込めば盛り込むほど、国や自治体に個人情報を把握されることになり、個人情報の漏洩や悪用されるリスクについて国民は一層神経質になっていく。

マイナンバーに銀行口座をひもづけることになれば、せっかく変化の兆しがあった国民意識がまたもとにもどりかねない。そのジレンマをどう解決するかが今後の課題となるだろう。

Next: やはり基本は、個人情報保護の法律をいかに整備するかである。少なくとも――

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