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日本も追従する?中国で地方都市・農村向けビジネスが大流行しているワケ=牧野武文

下沈市場の消費者の収入分布を青年と中年に分けて見ると、下沈中年では都市部とほぼ差がなくなってきている

このように下沈中年の消費力が上がっているのは、地方都市で稼げるようになってきたからです。これにもネットの力が欠かせません。地方の農産物、工芸品などをECを使って出品し、利益を出せるようになってきています。また、地場の中小のメーカーなども、以前は近隣の都市にしか販売できませんでしたが、現在はECに出品をすることで全国規模のビジネスができるようになってきています。

この変化により、人の流れも変わってきました。80年代から始まった経済成長を支えた労働力は「農民工」でした。農民は、食料は自分で生産しているので売るほどありますが、現金収入がほとんどありません。自分の子どもに教育を与えるにはお金が必要です。そこで、農閑期に大都市に出稼ぎに出る。それが農民工でした。春節(旧正月)になると、農村に帰るため、毎年春先には数億人が中国国内を移動します。

農民工は低賃金であり、都市の建設や運搬、清掃などの肉体労働を担当しました。また、工場などの貴重な労働力にもなりました。中国は、このような安価な労働力が豊富にあったことで、国際競争力をつけ、経済成長をすることができました。

しかし、農民工はあくまでも農村が実家で、都市には出稼ぎにきているだけです。

これが2000年以降、「新青年」に変わりました。中国経済が成熟をし、人件費も上がってきたことから、出稼ぎではなく、農村から都市へ移住をし、都市を生活基盤とする人が増えました。特にEC、外売(フードデリバリー)、ライドシェアなどのサービスが始まると、宅配便配送員、外売配送員、ライドシェア運転手などの仕事でじゅうぶんに生活ができるようになっています。新青年たちは、北京、上海などの大都市よりも、実家から近い中核都市に行きます。一級都市は、家賃などの生活コストも高いからです。

このような新青年の進出が、新一級都市が成長する原動力のひとつになっています。

そして、現在「小鎮青年」という言葉が注目されるようになっています。小鎮というのは小さな町、集落のような意味です。つまり、実家から都市にいくのではなく、実家で暮らし、そこで稼ぐ人が増えているのです。地元の農産物や工芸品、特産品をECを使って販売する、あるいは宅配物流の仕事をするなどです。また、ソフトウェア開発を行ったり、服飾や加工食品のメーカーを立ち上げる人もいます。

このような小鎮青年は、都市部の大学に行って学び、数年間働いて仕事を覚え、人脈を作り、それから地元に戻って起業するUターン組です。このような人が核になって、地方のビジネスが次第に成立するようになっています。

下沈市場の消費者「2つの特徴」

下沈市場の消費者には2つの特徴があります。それは「国産志向」と「ソーシャル」です。

<特徴その1:国産志向>
下沈市場の消費者は、大都市ほど海外製品を志向せず、国産品を購入する傾向にあります。かと言って、愛国心から海外製品を嫌うというわけではなく、素朴に国産品を選んでいるようです。大都市であれば、百貨店などで海外製品と国産品を比較する機会がありますが、地方都市ではあまり手にする機会がありません。よくわかっていて、価格も安い国産品を選び、その品質に満足しているということだと思います。むしろ、大都市の方が、情報や他人の目を気にして、過度に海外ブランドを志向する傾向があるのかもしれません。

下沈市場でも、スマートフォンの使用ブランド調査では、国産のファーウェイと海外のアップルが拮抗していますが、「次に買う時に選ぶブランド」を尋ねると、圧倒的にファーウェイになるのです。家電製品や化粧品でも同様の傾向があり、下沈市場は国産品が好きという特徴があります。

<特徴その2:ソーシャル>
もうひとつがソーシャルです。商品購入をする決め手になる要素を下沈市場の消費者に尋ねると、1位にくるのは「優待価格」ですが、2位が「友人の勧め」です。「テレビ広告で見た」というマスメディアによる効果は小さく、それよりもブランドの公式アカウント、ウェイボー、Tik TokといったSNSでの高評価を参考にしています。つまり、マスメディアではなく、友人関係というリアルなソーシャル、SNSなどのデジタルなソーシャルを参考に購入する商品を決める傾向があります。

Next: このような下沈市場の特徴をうまく捉えたのが、2015年にスタートした――

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