今、アメリカで人気が急上昇している「マインドフルネス」をご存知でしょうか? 新型コロナウイルスで心理的苦痛を感じている人口の割合が増加するなか、メンタルヘルス関連のビジネスにも注目が集まっています。(『決算が読めるようになるノート』シバタナオキ)
※筆者注:この記事はKimmyさんとの共同制作です。
※本記事は有料メルマガ『決算が読めるようになるノート』2020年7月16日号の抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
AppGrooves / SearchMan共同創業者。東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻 博士課程修了(工学博士)。元・楽天株式会社執行役員(当時最年少)、元・東京大学工学系研究科助教、元・スタンフォード大学客員研究員。
コロナが与えている心身的苦痛
今回は、コロナの影響によって改めて注目されているメンタルヘルスを取り上げます。
皆さんも体感されている通り、大きく行動を制限されたり、人によっては失業や休業を強いられている結果、メンタルへの悪影響が社会課題として既に浮き彫りになっています。
5月13日の国連の発表によると、コロナによって心理的苦痛を感じている人口の割合は、中国で35%、イランは60%、アメリカは45%と報告されています。
特に、医療従事者のうつ病や不眠症などの発症率が高くなっており、カナダでは47%の医療従事者がメンタルサポートが必要だと回答しています。
当然、子どもたちにも影響が及んでおり、 イタリアとスペインで、外出自粛中の子どもを持つ親に子どもへの影響を聞いたところ、「落ち着かない」や「イライラしやすい」との回答が39%。「なかなか集中できない」という回答は77%にものぼりました。
同報告によると、メンタルヘルスは最も軽視されている健康分野の1つで、各国がメンタルヘルスに費やしている予算は平均でわずか2%にしか及びません。
国連は各国政府に対し、メンタルヘルスへの意欲的な取り組みを呼びかけています。
世界的に見ても、メンタルヘルスの専門家は1万人当たり1人未満という状況であり、コロナが問題を引き起こしたというよりも、コロナをきっかけにもともとあった社会課題が改めて注目されたと言うほうが正しいかもしれません。
※参考:United Nations “COVID-19 and the Need for Action on Mental Health ”(2020年5月13日配信 ※PDF
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アメリカで拡大する「マインドフルネス」市場
各国のメンタルヘルス領域への投資が遅れている中でも、アメリカにおいては、近年「マインドフルネス」が民間でブームになっています。
マインドフルネスとは、「今、この瞬間に集中している心のあり方」であり、瞑想やヨガ等を通じてリラックスして集中している状態を目指すプロセスを指します。
ご存知の方も多いと思いますが、マインドフルネスは、グーグルやフェイスブックなどの企業研修に組み込まれています。心を健やかに保つメンタルヘルスのケアの1つとして、カウンセリングよりも簡単に、個人的に日常生活に取り入れられる点が人気となっています。
調査会社Appinventivによると、2010年あたりから、マインドフルネスに関する情報がメディアや科学雑誌で数多く掲載されるようになり、メディアでの露出度が年々増加しています。
全米衛生統計センターでの報告では、瞑想を利用する人口の割合は、2012年の4.1%から2017年には14.2%と3倍以上増加しており、普及率が上昇しているのが分かります。
ワシントンポストによると、今回のコロナの影響により、3月29日の週のマインドフルネス・瞑想アプリのダウンロード件数が75万件に達し、1月と2月の週平均を25%上回ったそうです。
※参考:Appinventiv “Meditation App Statistics to Know in 2020”(2020/02/28)
※参考:National Center for Health Statistics ”NCHS Data Brief No. 325” (2018/11)
※参考:Washington Post ”Feeling stressed? Meditation apps see surge in group relaxation” (2020/04/21)
瞑想アプリの事業者はこの期間、失業者や最前線で働く医療従事者へコンテンツを無料で提供するなど、いち早くパンデミックに対応しています。
Next: ここで、マインドフルネス・瞑想アプリの市場規模を金額から見てみま――