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【書評】『新聞の正しい読み方』=柴山桂太・京都大学准教授

新聞が権力だということになれば、当然、その権力を利用しようとする力も働きます。政治家や役人、大企業は都合のいい情報を書いてもらおうとしますし、市民団体は新聞の力を使って自分たちの主張を拡大しようとするでしょう。新聞は、そうした力がせめぎ合う場です。一つ一つの記事について「誰が」「どのような意図」をもって情報を発信しているのか、読者が見分ける力をもたなければなりません。

現代社会は、世論が決定的な力を持ちます。行政も司法も、世論には逆らえませんし、企業も世論を敵に回してまで商売はできません。世論を左右できる新聞は、非常に大きな権力を持っていると言っていいでしょう。それほどの力を持っているにもかかわらず、新聞の社会における位置づけはあいまいで、政府のように公法に縛られていませんし、企業のように市場競争によって律せられているわけでもありません。だからこそ、読者が新聞を批判的に読む必要があるわけです。

今後、新聞業界の再編が進み、新聞社の数も新聞記者の数も減ることでしょう。軽減税率を適用したところで、この流れが変わるとは思えません。だからといって新聞のもつ権力がなくなるとは限らない。ここに、新聞という社会装置の不思議さがあります。ニュースの生産を新聞社が担うという構図が変わらない限り、媒体が紙から電子に変わっても、世論形成への新聞の影響力がなくなることはないでしょう。報道の適切さを評価する姿勢を、読者が身につけなければならないゆえんです。

新聞リテラシー(批判的な読解)について書かれた本はたくさんありますが、新聞リテラシーをなぜ持たなければならないのか、その理由にまで踏み込んだ深い分析が行われているという点で、本書は類書にない説得力を備えています。新聞に興味があるという読者だけでなく、新聞なんか大嫌いという読者にもオススメできる良書です。

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