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黒人伝統の髪形に“校則違反”と卒業式隔離。噴出する「差別」批判に教育委員会は「生徒のルーツは知らなかった」と苦しい弁明

とある高校の卒業式で、日本人の母親と米国籍の父親を持つ生徒がコーンロウで臨んだところ、学校側が卒業生用の席に着席することを認めず、他の生徒がいない2階席に隔離するという措置をとっていたことが判明し、批判の声が渦巻く展開となっている。

報道によれば、騒動があったのは兵庫県姫路市の県立高校。生徒は父親のルーツである黒人の文化では伝統的なコーンロウで卒業式に出席しようとしたところ、複数の教師から「校則に合っていない。高校生の髪形ではない」と言われ、生徒指導室で約1時間待機させられたとのこと。その後、式が始まっていた体育館に連れて行かれ、他の生徒のいない2階席へ行くよう求められたうえに、名前を呼ばれても返事しないように念押しされたという。

この学校の校則では、髪形について「高校生らしい清潔なもの」と規定。男子は「目や耳、襟にかからない」との基準があったといい、生徒は式の前日、自らのルーツや髪質を踏まえて美容室で髪を編み込んでもらい、耳周りも短くしたとのこと。また派手にならないよう美容師に相談し、染色や付け毛などはしていなかったという。

生徒は「さまざまな背景や髪質の人がいるのに一律に校則違反と決めつけるのはおかしい。ルーツを尊重してほしい」と語っているといい、海外にルーツを持つ子どもが増えるなか、校則や頭髪指導のあり方が問われそうだと、記事では述べられている。

国際問題に発展との声も

「下着は白のみ」「ツーブロック禁止」などといった、いわゆる“ブラック校則”と呼ばれるような不条理なものも多く存在するなど、今もなおメディアによる報道などで世間を賑やかすことの多い、小・中・高校における校則の話題。

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そんななか文部科学省は、教員が生徒指導を行う際の手引書となる「生徒指導提要」を22年12月に初改定し、そういったブラック校則の類は児童生徒の意見を聞きながら、時代に合わせて見直すべきと促している。

しかしながら、この手の話は尽きないというのが実際のところで、今年に入ってからに限っても、広島市の公立中学校では極寒の日にジャンパーを着て登校した生徒が、「校則」に基づいて着てこないよう教員から指導を受けたところ、その後発熱したという話があったようで、そのことをNHKが報じて大きな話題になったことも。

さらに、つい最近では大阪市の私立清風高等学校において、学内で実施されている頭髪検査で、教師が生徒の前髪を引っ張って不合格とする事例などがあったなどとして、生徒らが校則の見直しなどを求めて人権侵害の救済を申し立て。それを受けて大阪弁護士会が、学校側に改善を求める“勧告”を行ったと報じられたばかりだ。

そんな最中で起こった今回の件なのだが、先述の通り卒業式から“隔離”されただけではなく、生徒が卒業式後に卒業証書や記念品を受け取ろうとした際も、他の生徒のいない部屋に通されたうえに、トイレに行く際にも教師が付きまとい、さらには校内で友人を待っていた際には、教師から「校内から出てくれ」と言われたとのこと。そんなクラスメイトらとの“最後の交流”までも頑なにシャットアウトしようとする、そのいきすぎな指導にも批判が集まっているところ。

しかし、それ以上に今回の件は、生徒のルーツにかかわる髪型を真っ向から否定する格好となったということで、SNS上からは「差別ではないか」との意見が噴出。一部からは国際問題にも発展しかねない……といった見方もあがるなど、従来あったようなブラック校則への批判とはまったく異質な炎上の仕方をしているようだ。

県教委は慌てて記者会見も…

このように、単なるブラック校則への批判どころではなく、差別問題として広く取沙汰されるに至っている“異常事態”とあってか、兵庫県の教育委員会もかなり対応が早く、報道があった28日に神戸市で記者会見を開いた模様

それによると県教委は、式典で名前を呼ばれても返事しないよう学校側が求めたことなどに関しては「教育的配慮が足りなかった」と、学校側の指導内容を問題視。そのいっぽうで、生徒のルーツについては「国籍は学校側もつかめず、想像するしかない。この髪形が自身のルーツであると説明してもらえればよかった。互いの思いが一方通行だった」と説明したようである

要は生徒のルーツに関して、学校側は何も知らなかったということを殊更強く主張したいようで、“差別的な対応”との批判からは何としても逃れたいといった、県教委や学校側の焦りが透けて見えるところ。

とはいえ、3年間その高校に通っていたという生徒の国籍などの身の上のことを、学校側がまったく把握していなかったというのも、俄かには信じられないような話で、SNS上では「ある意味凄いこと」「この子の事を何も知ろうとしてなかったのだろう」などと、呆れ返る声が多くあがっている。

それにしても、児童生徒の意見を聞きながら改善すべきと、文科省が「生徒指導提要」改定版で促した不条理な校則を巡る問題だが、このような学校側と生徒側との“没交渉”ぶりをみると、対話など到底無理なのかとつくづく思わされるところ。先述の清風高校の生徒が校則の見直しを求めるため、外部の弁護士に頼ったというのも、そんな対話への“諦め”がゆえ、とも言えそうである。

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