fbpx

善光寺「びんずる尊者像」盗難も犯人スピード逮捕。後を絶たない仏像盗難事件、業者間での転売を経てヤフオクに出品されるケースも

長野市の善光寺にある「びんずる尊者像」が、盗難に遭ったというニュースがSNS上で大きな話題となっている。

普段は善光寺の本堂入口に安置されている木製のびんずる尊者像だが、報道によれば5日の午前8時すぎに、それを袋に入れて持ち去られるところが防犯カメラに映っていたとのこと。

患部と同じところを撫でると治るとされ、地元民から広く信仰されている存在なだけに、心配する声が多くあがっていたのだが、窃盗事件として捜査していた長野県警はその後、同県松本市内で不審な車の男を職務質問したところ、車内にその木像を発見。窃盗の疑いで熊本県在住の30代男を逮捕したという。

過去には“分県”も取沙汰された長野と松本の対立

今回、盗難被害に遭ったびんずる尊者像だが、300年以上前につくられたとされる1メートルほどの座像。

その姿をみるに、江戸の古きから参拝客らに撫でられまくっているだけあり、顔の一部などはツルツルになっており、古美術品などとしての価値はさほど高くなさそうな気も。ただ、普段から参拝客から近い位置に安置されていたこともあり、盗み出すのは比較的容易だったものと思われる。

地元警察の迅速な捜査の甲斐もあって、盗難が判明したその日のうちに発見されるというスピード解決に至ったわけだが、いっぽう木像が松本市内で発見されたという報道が流れた際には、「びんずるさん、夜中に歩いていかれたのか」といった、まるで昔話のような呑気な声もあがる反面、「これは揉めるなぁ」といった、長野市と松本市のライバル関係を念頭に置いた見方もSNS上では飛び交う展開に。

明治初期の廃藩置県の頃にはどちらに県庁を置くのかで大いに揉め、さらに第二次世界大戦が終わって間もない時期にも、県議会において県庁の松本移転、さらには長野県の“分県”が大いに議論されたこともあるなど、なかなか根深いものがあるという“長野vs松本”のライバル関係。

【関連】長野県民の心をひとつにする「信濃の国」が止めた「南北戦争」

今でも長野市民と松本市民の間では、それぞれの市に存在する名門校の進学実績や、地元にあるサッカーチームの強弱、さらには「長野には地下鉄がある」「いや、松本にはパルコがある」などと、その都会ぶりを主張し合ったりと、本気なのかネタ半分なのかは分からないが、何かとやりあっているのだという。

そんななか、長野市を象徴する神聖なスポットとも言える善光寺から木像が盗まれ、それが事もあろうか松本市内で見つかったということで、これを機に対立が再び過熱しかねないのでは……といった恐れが広がったわけだが、その後程なくして、犯人は県外の人間だったことが判明。そういった声は沈静化したようである。

ちなみに、松本市民がその都会ぶりを示す際に度々挙げる「松本パルコ」だが、2年後の2025年2月末で閉店することが、今年2月末に発表されたばかりで、市民の間ではショックとともに、地元経済の地盤沈下を危惧する声が広がっているようである。

仏像盗難防止に3Dの身代わりを作る対策も

仏像などの盗難に関しては、ここ最近に限らず後を絶たないといった状況のようで、文化庁のサイトを見てみると、重要文化財のみに限っても盗難などの理由により所在不明になっている仏像・神像は15点もある模様。そういった国指定の文化財以外のものを含めれば、これまでに盗難という受難に遭った仏像は、数知れず多いといったところだろう。

仏像盗難事件といえば、頭によぎるのが長崎県対馬にある寺社仏閣から重要文化財の仏像複数点が盗まれた一連の出来事。仏像は韓国人窃盗団によって韓国に持ち込まれたことで、日韓間の外交問題にまで発展したこの件だが、今年2月に韓国国内で行われた裁判では、1審を覆して所有権を主張する韓国の寺の訴えが退けられ、日本側の所有権認める判決が出たようで、問題決着に向けて少しづつ話が動いているといった状況のようだ。

そのいっぽうで、ここ最近では単純に“転売して儲けたい”といった動機での仏像盗難も多く露見しているようで、22年には京都市内の寺で盗まれた仏像1体が、ヤフオクに出品されているのが発見され、そのことがきっかけで仏像を盗んだ男の逮捕に至ったというも。男は「生活費にするために売った」ということで、仏像は業者間での転売が繰り返された末に、大分県内の古物商が“盗品とは知らず”ネットオークションに出したという。

このように対面なしで取引できるオークションサイトの普及にくわえ、元々寺社仏閣はセキュリティが比較的甘いという点、また過疎化などで管理が行き届かず廃寺同然のところも増えていることも、盗難被害の増加に繋がっているとされる。そのため最近では盗難防止のため、3Dプリンターで作られた精巧な複製仏像を寺に安置し、本体は博物館などに保管するといった方式を採用するところも増えてきているようだ。

今回のびんずる尊者像の件に関しても、転売目的での窃盗という線も大いに考えられるところだが、とはいえ地元では相当信仰されている存在だけあって、窃盗犯に対しては「罰が当たる」といった声も多くあがっているところ。そういった大きな反響も、迅速な捜査に繋がったといえそうで、逆に犯人側からすれば思わぬ誤算だったのかもしれない。

Next: 「長野県、びんずる像以外にニュースが無い」

1 2
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー