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著名投資家のジム・ロジャーズが「北朝鮮の内部崩壊」を確信するワケ=東条雅彦

北朝鮮と米国の軍事衝突リスクが高まっています。識者の中には、北朝鮮は米国の外圧によって潰されると予測する人もいます。これは「外部崩壊」となります。

一方、世界三大投資家のひとりジム・ロジャーズが予測しているのは、北朝鮮の「内部崩壊」です。ロジャーズは前々から、北朝鮮と韓国が統一されることを予測し、「北朝鮮は国を開きかけている」と指摘していました。

北朝鮮は国内の情報を外部になかなか出さないので、内部で何が起きているのか、私たちが正確に把握するのは困難です。そこで本稿では「国家によるIT活用」の観点から、ロジャーズが指摘する「開国」のわずかな兆候と、北朝鮮の意外な実態を追ってみましょう。(『ウォーレン・バフェットに学ぶ!1分でわかる株式投資~雪ダルマ式に資産が増える52の教え~』東条雅彦)

ジム・ロジャーズは、体制崩壊後の北朝鮮に何を見ているのか?

現行体制の「崩壊」は揺るがず、問題はそのプロセスだ

かつてジョージ・ソロスとクォンタム・ファンドを共同で立ち上げ、巨額の利益を稼ぎ出した著名投資家のジム・ロジャーズ。彼は前々から、北朝鮮が今後大きく発展していくことを予見していました。2007年に初めて北朝鮮を訪れ、実際に起きている変化を目の当たりにして、この国は近い将来、大きく変化すると確信したのです。

ジム・ロジャーズ 出典: Wikimedia Commons

ジム・ロジャーズ
出典: Wikimedia Commons

2015年5月5日、CNNマネーとのインタビューで、次のように述べています。

「可能であれば、持っているお金すべてを(北朝鮮に)投資したい

「金正恩(キム・ジョンウン)の父や祖父の代なら、絶対投資しないだろう。毛沢東時代の中国なら中国に投資しないと同じことだ」

「しかし、毛はこの世を去り、鄧小平が大きな変化をもたらした。北朝鮮では大きな変化が起きている。その子(金正恩北朝鮮労働党第一書記)が驚くべき変化を作りだしている」

出典:世界有数の投資家ジム・ロジャーズ氏「北朝鮮に全財産投資したい」

また、ロジャーズは2017年3月5日、『The Korean Times』のインタビューで、北朝鮮は内部崩壊して、南北統一が近づいていると答えています。

2017年4月に入り、核開発を推し進める北朝鮮に対して、米国が「待った」をかけました。現在、北朝鮮は米国と軍事衝突する一歩手前まで来ています。この動向はどうなるかわかりません。

ロジャーズは、北朝鮮が内部崩壊する可能性について言及していますが、もしかすると、米国によって外部崩壊するかもしれません。

いずれにしても、北朝鮮の現体制は崩壊する方向であることには違いありません。

ジム・ロジャーズが語った北朝鮮の内部崩壊シナリオ

前述の『The Korean Times』の中で、ロジャーズは次のように語っています。

金正恩の後継者がいなければ、内部から倒れるかもしれません。ソビエト連邦は内部から崩壊した。東ドイツも内部から崩壊した。人々が外界に晒されたからです。

現在、北朝鮮は外界に晒されています。2017年、北朝鮮は違う。北朝鮮の人々は中国では物事がはるかに良くなっていることを知っています。彼らは韓国人が貧乏で飢えていると思っていましたが、今はよく知っています。10年前、彼らは知らなかった。人々の期待が高まると、革命が起こる

近年、中国からの来訪者が北朝鮮を訪れるようになり、北朝鮮の人々は、周りの国で何が起きているのかを明確に意識するようになったと言います。

2014年6月14日、ロイターは、「北朝鮮観光ブーム、相次ぐ拘束にも米国人旅行者が増加」と報じています。

北朝鮮政府は観光客数を公表していないので、正確な数字はわかりません。

旅行代理店の推計では、欧米からの旅行者は年間6,000人に上り、10年前の700人から大幅に増加しているそうです。

こういう報道が出ること自体、金正恩が指導者になってから、少しずつ「開かれた国」になりつつある証拠です。

確実に「開かれた国」になりつつある北朝鮮

ロジャーズは「(北朝鮮の)人々が外界に晒された」ことが、内部崩壊につながると分析しています。

その客観的な証拠を1つ示せるとしたら、貿易額の急増です。

北朝鮮側は貿易額の情報を公開していませんが、相手国の輸入額と輸出額から判明しています。特に2011年頃から急増しています。

<北朝鮮 貿易額の推移(1985年~2015年)>

金正恩は、2010年に父・金正日から後継者に指名されています。その翌年の2011年に、北朝鮮の最高指導者に就任しました。

金正恩時代になって、北朝鮮は「開かれた国」になりつつあります。貿易する際に、海外の人と連絡を取り合ったり話したりして、交流する機会が増えます。

貿易相手国としては中国がトップを占め、貿易額全体の9割を占めています。北朝鮮の人々は、豊かになっていく中国を目の当たりにしてきたのです。

北朝鮮での「スマホ大流行」は何を意味するか?

ニューズウィーク日本版2016年3月17日の記事によると、北朝鮮では携帯電話がすでに370万台以上普及しているそうです。

人口がおおよそ2500万人で世帯数は約600万なので、単純計算で2世帯に1台以上の普及率です。

近年は携帯電話からスマホに移行しつつある時期で、首都の平壌ではスマホを使っている人を見かけるのは特に珍しい光景ではないとのことです。

販売されているスマホは、『Arirangシリーズ』と『Pyongyangシリーズ』という北朝鮮特別仕様のブランドです。インターネットには接続できないものの、イントラネット(北朝鮮内で閉じられたネットワーク)には接続できます。

北朝鮮の人々は、これでニュースを見たり、料理レシピを見たり、ゲームを楽しんだり、様々な用途で利用しています。

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