「独断力」は現代を生き抜く力
もちろん、他者の意見を参考にすることもありますし、自分よりももっと優れた着想に出会うこともある。それらを取り入れることも必要です。それ自体を否定するものではありません。
あるいは、本当に迷ったときは専門家に聞けばいい。その専門家も、たとえば「自分で情報を集めるには効率が悪すぎる」ものに限定することです。
たとえば法律や税金などは、自分で調べるには手間も時間も膨大にかかり、現実的ではありません。だから弁護士や税理士といったその道のプロにお金を払って相談するほうが合理的です。
しかしそうした情報を取り入れつつ、自分の信念や価値観で導き出した答えは、他人の価値観が入り込んでいない、自分だけのオリジナルです。それはつまり、「自己責任で生きようとする姿勢」そのものに他なりません。
なぜなら、「自分だけで決めよう」「結果もすべて自己責任」と覚悟すればするほど、自ら情報を集め、リスクや課題や問題点を先回りして想像して対策を考え、時には緻密にプランニングし行動することになるからです。
そして、どんな結果になっても自己責任として受け止める覚悟ができますから、それが望ましいものでもそうでないものになったとしても、納得感が得られます。強烈な自己責任意識が根底に流れていれば、そこに生まれるのは極めて能動的な行為です。
反対に、自己責任意識が希薄なら受動的な姿勢となり、あるいはリスクや問題の想定も甘くなり、何か困ったことが起きても、茫然とするか他人のせいにするしかなくなります。
例えば、ちょっと古いですが、2011年に関東を通過した台風15号。帰宅ラッシュ時と重なり公共交通機関が軒並み運休となったため、帰宅困難者が街であふれかえりました。多くの人が駅で座り込む、タクシーに長い行列を作る。
こういう事態は直前3月の東日本大震災で経験済みで、すでに予測できたにもかかわらずです。それは非常に脆弱な生き方だと思えないでしょうか。
そこで、自分にとって常に合理的な判断・決断ができるようになるには、どうすればよいのかという点にフォーカスし、私自身の経験と私の周囲の成功者の例を紐解き考察していきたいと思います。
なぜ一流の経営者は他人の言うことを聞かないのか
私は多くの起業家・経営者と出会ってきましたが、特に一代でのしあがった中小企業経営者の多くは、誰にも相談しないし他人の話を聞かない傾向があります。その理由は何か。
そもそも経営トップは、その事業において最も優れた発想力や判断力を持っているからこそ、その組織のトップたりうるわけです。
そして、それらが同業他社よりも優れているからこそ成長し、生き残ることができている。つまり本人の周囲には、本人のアイデアや考えを上回る意見を持つ人がほとんどいないため、相談するだけ無駄なのです。
むろん、人に話すことで自分の考えが整理されたり、反応や意見を聞くことで自分の着想をレベルアップさせることがあるとは言われますが、それは凡人の話。
そうした高度に内省的な知的作業が独力でできるからこそ、彼らはイノベーターなわけです。
また、誰にも相談する必要がなければ、意思決定も行動も速くなる。特にベンチャー企業が機動性に富んでいるのは、組織や階層の問題だけでなく、そういうところにも理由があります。
「経営者は孤独」という言葉も、それはネガティブな意味ではなく、すべての主導権を自分が握っている状態を指しています。
自分の社会的責任をすべて「代表取締役」というその身に負って経営しているわけだから、周囲からどんな意見があったとしても、最後は自分自身が決める。
周りが「やめとけよ」「ムリだよ」「無謀だよ」と言っても関係ない。自分が「やりたい」「行ける」「やるべき」と判断したら、誰にも止めることはできない。
自分ひとりの意志で決めるからこそ、そこに「覚悟」が伴い、責任感やモチベーションを強く持つことができます。
つまり「経営者は孤独」というのは、最終責任を負うのは経営者ただ一人であり、その覚悟があることなのです。
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