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アルケゴス破綻で見えた規制の穴。なぜ大手金融機関が巨額損失を被った?ファミリーオフィスの実態とは=今市太郎

レバレッジを効かせて急激に大きな原資として運用か

もともとフアン氏の保有していた資産は日本円にして200億円足らずだったものを、短期間で1兆5,000億円にまで大きくさせたわけですから、ここだけをとってもなかなかのやり手トレーダーであったことがわかります。

どうやらこれにほぼ8倍程度のレバレッジをかけて、1,000億ドル近い取引をしていたようです。それも株の現物取引ではない、いわゆるCFDによる取引であったことがポイントです。

本来なら、米株で1億ドルを超えるものを保有している場合には、四半期ごとに保有資産について規制当局に報告する必要があります。それをくぐり抜けて取引を続けてきたことがわかります。

ただ、投資銀行業界はこのアルケゴスが株価の下落から追証を求められてデフォルト寸前になっていることは、先週の段階ではっきり認識していた様子。25日には主要の銀行が出席した電話会議なども行われたようです。

そして、JPモルガンが26日に強制決済を行い、アルケゴスの資産の差し押さえに動いたことから問題が顕在化。今週になってから大騒ぎとなったわけです。

問題は、なぜ主要銀行がこうしたオフィスと取引したのか

ミレニアル世代にとっては聞いたこともない名前だったのでしょうが、業界に長くいれば、このフアン氏がどういう存在なのかは知っているでしょう。

アルケゴスと取引した金融機関も十分にわかっていたはずで、ファミリーオフィスとは言え、かなり脇の甘さが目立つ状況です。

国内では野村のみならず三菱UFJ証券も330億円程度の損失を食らっているようで、レバレッジをかけて飛んだ損失・追証部分は恐らくこのファミリーオフィスからはまったく回収できずに、相対取引を許した各金融機関の損失になることは間違いなさそうです。

どの金融機関も「いくらの損失になるのかよくわからない」としているのは、このオフィスが正確に清算して損失を確定させないとわからないからなのでしょう。

言ってみれば、店頭FX・CFD業者がかなり大きな資金をレバレッジをかけて運用する個人と相対取引の契約を結び、好き勝手に売買させてみたら大きく相場が下落して、証拠金不足から追証が発生し、払いきれずに破綻した……というのがごくごく簡単なこの事象の構図ということになりそうです。

リーマン・ショックから12年半近くを経過して、金融業界はまたもかなり緩くなりはじめていることがよくわかります。

Next: ほかのファミリーオフィスは大丈夫か?金融機関の緊張感も薄れている

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