菅首相の訪米では日米関係の親密さを強調することはできたのでしょうが、日中関係に亀裂が入りました。経済的な視点では習近平による対日制裁が大きなリスクになってきており、決して無視などできないところにさしかかっています。(『今市太郎の戦略的FX投資』今市太郎)
※本記事は有料メルマガ『今市太郎の戦略的FX投資』2021年5月6日号の抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め初月分無料のお試し購読をどうぞ。
日中関係が大きな経済リスクに
菅首相の訪米で発表された日米首脳声明ですが、内容は安倍前首相の時でも出されなかった「台湾」という名称が公然と掲示されています。
日米関係の親密さを強調することはできたのでしょうが、ここから日中関係が果たしてどうなるのか。非常に危惧されるところとなってきています。
足もとでは、新型コロナ変異株の感染拡大や東京五輪“強硬開催”の話題のノイズレベルが大幅に上昇中。中国側の日本に対する対応はどうなるのか?といったことには、誰も触れない状況が続いています。
しかし、経済的な視点では、この日中関係が大変なリスクになってきており、決して無視などできないところにさしかかっています。
本邦輸出の中国比率は過去最高。中国が日本制裁に動けば被害は避けられない
財務省が4月19日に発表した2020年度の貿易統計速報によれば、輸出入で本邦の中国への依存度はコロナ禍でも非常に強まる結果となっています。
とくに輸出における中国向けの比率は、過去10年で最も高い22.9%に達したことがわかっています。
対中輸出が米国を抜き、しかもその比率が2割を超えるというのは過去最高の数字で、名実ともに中国が本邦にとっての最大輸出国となっていることがわかります。
米国と肩を並べ、米国を支えるような菅政権の外交政策が、経済の領域で暗い影を落とすであろうことを初めから十分に覚悟して臨んでいるのなら、国家的対中戦略の下で経団連も個別輸出企業も諦めざるを得ないのかもしれません。
しかし、傍で見ている限りは、そんなコンセンサスが国内市場で形成されているとはまったく思えない状況です。
現状のような米国に従属する日本の対中強硬姿勢に対し、中国がなんらかの制裁的行動に出ることになれば、日本経済への打撃は想像以上のものになるリスクが急激に高まっていることがわかります。