実際、会社側は従業員の副業をどのように考えているのか?
俣野:御社では、2年前から副業をOKにしていたそうですが、中小企業の中では、かなり早い対応だったと思います。何かキッカケがあったのでしょうか。
馬場:最初は「グループ企業内での掛け持ちOK」からスタートしました。弊社はプロモーション事業やフランチャイズ事業など、多くの事業を手掛けています。ダブルワークを導入した経緯は、社員に「他の事業も知ってもらうことで視野が広がり、それが今の仕事にも活きるのでは」との考えからでした。
でも、始めてみると、「他でやりたい」「グループ内じゃないとダメですか?」といった問い合わせが相次ぎました。
経営側からすれば、従業員に肉体労働などで時間を埋められるくらいなら、本業のスキルを活かしてグループ内で働いてもらったほうが、お互いのためではないかと思いました。しかしスタッフには、こちらの意図が上手く伝わらず、構想は軌道に乗りませんでした。
「それなら」というので副業を許可制にして、他社で働くこともOKにした次第です。
俣野:許可制というのは、具体的にどのようなプロセスがあるのでしょうか。
馬場:スタッフが「副業をしたい」と思った時、まずはどのような副業をするのかを考えてから、直属の上司と相談し、申請用紙に記入します。上司はその用紙をもとに役員会議で報告し、「スタッフの○○さんが、こういう副業を申請してきています」と伝え、申請を許可するかどうかを会議にかけます。
俣野:申請しても通らないことがあるのですか?
馬場:役員会議で「ああ、この人なら問題ないでしょう」とすんなり通る場合もあるし、「このスタッフは副業する前に、まずは現場でしっかりやることが先じゃないか?」といった意見が上がる場合もあります。
個人的には、副業をやる・やらないとは関係なく、本人が、まずは本業でしっかり成果を出すことが大事なのではないかと考えています。若いスタッフが、本業で確固としたスキルを身につけないうちに、適当に副業を始めてしまうと、その分の時間を失うことになります。
仕事人生を俯瞰して見た時に、技術を積み重ねていかない限り、結局は「本業で昇給しない分を副業で補っているだけ」といった状態になりかねません。
俣野:同感です。たとえば「自分の思い描くキャリアに近づくため」とか、「さらに経験値を積むため」に副業を活用する、というほうが、後々返ってくるものが大きいような気がします。
若いうちは、どうしても「もっとお金が欲しい」となりがちではありますが。