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岸田総裁「3本の矢」堅持が命取りに。アベノミクスが生んだ貧富格差は“脱・新自由主義”で解消するか?=原彰宏

消費税そのものを考える

ここで、少し脱線しますが、消費税そのものについて考えたいと思います。

次の衆議院選挙に向けて、野党は共闘の条件として消費税率を「5%」に引き下げることを共有しています。

もともとれいわ新選組は「消費税廃止」を訴えていましたが、立憲民主党が期間限定ではありますが消費税率「5%」に引き下げることで、れいわの山本代表は野党共闘のテーブルに付くことになりました。

根本を考えれば、消費税を導入した目的は「直間比率の見直し」でした。税収割合において、所得税などの「直接税」の方が、消費税のような「間接税」よりも比率が高く、税収が直接税に偏りすぎて安定しない(所得税収などは経済状況で増減しやすい)から見直そうというものです。

財務省ホームページ資料によれば、2018年度実績額では、直間比率(国税+地方税)は「64:36」となっています。

海外比較の表があり、次の通りになっています。

米国「76:24」
英国「57:43」
独国「55:45」
仏国「55:45」

日本は確かに、欧州諸国と比べれば、直接税に偏っていると言えます。しかし、米国と比較すれば、むしろ米国のほうが直接税に偏っているということになります。

では、どれくらいの数字にすれば、理想的な直間比率になるのでしょうか?

要は「税金を取りやすいところから取ろう」「毎年の税収を安定させよう」……この目的で作られたのが、消費税なのです。

それが、消費税は、広く国民が負担する安定した税収となるので、長く維持しなければならない社会保障などの財源にはちょうどよいという論理になっています。

ところが、消費税が社会保障制度維持に使われていないのではないかという指摘があります。

民主党野田政権時に、当時の民主党・自民党・公明党の「3党合意」で、消費税率を引き上げる代わりに、消費税を社会保障制度維持のために使う目的税化することを約束していたのですが、自民党が政権を取ったら、この約束は守られませんでした。

消費税の一般財源化、つまりプライマリーバランス(政府支出を国債発行なしで税収の範囲で賄う)改善のために使われているのでは?との指摘があります。

「消費税ありき」で進む財政政策

もともと逆進性、つまり低所得者ほど税負担感は重くなるのでは?と言われている税制度なだけに、社会保障維持のために消費税が使われないなら、消費税のあり方を見直すべきだという議論が起こってもおかしくありません。

しかし、もはや「社会保障制度維持のためには消費税は必要」ということが広く国民にも刷り込まれているものですから、たとえ今は消費税が一般財源化していても、消費税をなくす議論には結びつかないのでしょう。

事実、立憲民主党も、自民党新総裁となった岸田文雄元政調会長も、いずれは「増税やむ無し」という立場をとっています。

自民党岸田派は、宏池会の流れをくむ伝統あるな派閥ですが、昔から財務省とのつながりが強く、増税を主張してきた経緯があります。

増税か、経済成長か。経済成長を重視したら格差が広がる。でも、増税はいやだしなぁ……という声が大半です。

ここで、経済政策として取られられてきた「リフレ派」、つまり経済成長をすれば自然と税収は増えるとする今までの考え方が正しいのかどうかが問われてくるのです。

「新自由主義」と呼ばれる政策が正しかったのかということが、これからの日本における経済政策のあり方に関わってくるようです。

ちなみに、宏池会の流れにある岸田文雄氏は「脱・新自由主義」を掲げています。

Next: 海外投資家が歓迎したアベノミクス、「新自由主義」は正しかったのか?

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