今年の夏には参院選があります。勝敗を左右するのは「オミクロン株」「インフレ」への対処だけではなく、「防衛」や「脱炭素」への戦略をどう有権者に示すかでしょう。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)
※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2022年1月19日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。
夏の参院選を左右するのは「防衛」と「エネルギー戦略」
夏の参議院選挙に向けて、与野党各党はすでに動き始めました。
前回の衆議院選挙では、野党共闘にも拘わらず、野党側が敗北しています。この夏こそ、選挙の戦い方が問われています。
一部のメディアによると「いま選挙をやれば、1人区32のうち30を与党が取る」など、参院選は“与党大勝”との予想が出ています。
この参議院選挙を左右する要素としては、オミクロン株への対応、インフレが予想以上に高まって国民生活を圧迫することになった場合の対処だけが注目ポイントではありません。
岸田政権が「防衛」「エネルギー戦略」をどう考えているのかに焦点を当てるべきでしょう。
世界が核兵器使用に制限を加える方向に動いているときに、唯一の被爆国日本が蚊帳の外で、敵基地攻撃能力を議論していることに国民は納得するでしょうか。
核保有5大国共同声明
年明けの3日、国連安全保障理事会の常任理事国で、核保有国でもある米国・ロシア・中国・フランス・英国の5か国が、「核戦争に勝者はいない。核戦争は絶対に始めてはならない」とする共同声明を発表しました。
当初4日に国連で核拡散防止条約(NPT)の再検討会議が予定されていましたが、コロナのために延期になり、代わってこの共同声明につながりました。
これは「常任理事国による核戦争と軍拡競争の防止に関する共同声明」と題するもので、「核兵器の使用は広範な影響を及ぼすため、核兵器が存在し続ける限り、防衛目的、侵略抑止、戦争予防のために利用されるべきことを確認する」としています。
日本はこれまで唯一の被爆国でありながら、米国の核の傘に守られているために、核兵器禁止条約には参加していません。
広島出身の岸田総理にはこれまでよりも踏み込んだ対応が期待されていますが、ここまでは音なしの構えで、先に核保有国が動く事態となりました。
核問題で日本は蚊帳の外に置かれています。