「ACE2受容体」とは異なる「ヘパラン硫酸」
南アフリカで感染者数は減少しているにもかかわらず、なぜオミクロン株の死亡者が増大しているのか、そのはっきりした理由は分からない。感染者の多くが重症化リスクの高い高齢者だったからなのか、または南アフリカ独自の理由もあるのかもしれない。
しかし、最近の研究でオミクロン株に独自な特徴も発見されており、それが死亡者数の増大にかかわっている可能性も指摘されている。
それは、オミクロン株が人間の宿主細胞に進入するための経路である「受容体」の種類が、オミクロン株では異なっているようなのだ。
周知のように、デルタ株までのコロナウイルスはウイルスの表面の「スパイク蛋白質」が、人体のなかにある宿主細胞の「ACE2受容体」と結合することで感染した。ウイルスが細胞の中に侵入し遺伝物質を注入すると、正常な細胞はウイルス細胞に侵され、増殖する。こうした「ACE2受容体」は、消化管、腎臓、心臓、血管などに広く分布しているものの、肺に集中的に存在している。この結果、コロナウイルスは主に肺に侵入し、重度の肺炎を引き起こした。
だが、「ベルリン自由大学」と「マックス・プランク研究所」のドイツの研究者たちによる新しい研究で、オミクロン株は「ヘパラン硫酸」を含む様々な「細胞性ポリアニオン受容体」を利用して、宿主細胞に結合することができるという驚くべき結果が出た。
筆者は医療分野の専門家ではないので、詳しい解説はできない。要点のみの指摘に止める。「ヘパラン硫酸」とはすべての動物組織に見られる線状多糖類のことだ。それは、動脈組織,白血球,脳,腎臓,肝臓などに広く見いだされる。これはどういうことかというと、オミクロン株のウイルスがこれを受容体にして宿主細胞に侵入するのであれば、肺のみならず広い範囲の臓器に問題が起こる可能性を示唆している。
過去の研究では、「ヘパラン硫酸」のような受容体に結合することによって、ウイルスが様々な長期的な医学的問題を引き起こすことが既に示されているようだ。「ヘパラン硫酸」は様々な細胞プロセスや経路に重要であるためだ。
この研究結果を紹介した医療専門サイト、「タイランド・メディカルニュース」によると、最初は無症状か軽い症状しかなかったにもかかわらず、数週間後、数ヶ月後にオミクロン株に感染した人々にさらに心配な病状が生じてくる可能性があるとしている。
これらの新しい病状の多くは、脳卒中、心不全、脳静脈洞血栓症(CVST)、急性腎障害、脳や中枢神経系の障害、肝臓障害、胃腸の問題による癌や敗血症、免疫システムの調節障害による二次的日和見感染、免疫不全などではないかという。