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東京ドーム“現金お断り”も時代の流れか? 本格的に普及するキャッシュレス社会も、カード会社による“ロシア制裁”で改めて実感するその危険性

プロ野球の開幕を今月下旬に控える東京ドームが、今シーズンから場内では“現金お断り”の完全キャッシュレス化に踏み切ったことが、大きな議論となっているようだ。

巨大なLEDビジョンの設置や“顔パス”が可能な顔認証システムの導入などの大規模な改修を行い、3月2日にリニューアルオープンした東京ドーム。それに伴い、場内チケットカウンターをはじめ、グッズを販売する売店から客席での販売に至るまで、完全キャッシュレス化されたという。

報道によると、場内には「DXサポートデスク」なる施設を複数設け、キャッシュレス決済手段を持たない人のために1,500円チャージ済みのSuicaを2,000円で販売するなど、キャッシュレス決済に不慣れな観客向けのサポートも行っているとのことだ。

野球場初の完全キャッシュレス化は“楽天”も…

プロ野球の本拠地球場における完全キャッシュレス化は、今回の東京ドームが初めてではなく、東北楽天ゴールデンイーグルスの本拠地である楽天生命パーク宮城では、すでに2019年シーズンから原則球場内では現金が使えなくなっている。

ところが、その際に対応していた決済方法が、各種クレジットカード以外の電子マネー・スマホ決済の類だと楽天ペイと楽天Edyだけと、明らかに自社サービスへの取り込みの意図がミエミエだったこともあり、観客からの不満の声も少なくなかった模様。そのためか同球場では、翌2020年からはSuicaなど交通系電子マネーでの決済にも追加で対応している。

その点、今回の東京ドームのほうは、クレカはもちろん交通系も含めた各種電子マネー、またスマホ決済もペイペイ、楽天ペイ、d払いなど、主なところあらかた網羅しているため、プロ野球ファンからは「宮城球場よりは親切」「東京ドームのほうがまだ良心的」といった声もあがっている状況である。

さらに、楽天生命パーク宮城で完全キャッシュレスが始まった2019年と比べても、コロナ禍において非接触で決済可能という点が持て囃されたこともあって、キャッシュレス決済の普及はさらに進んだ感も。それだけに、今回の東京ドームでの完全キャッシュレス化に対しても、これも時代の趨勢と受け止められているのか、激しい反発の声はあまり聞こえてこないといった印象だ。

ちなみに、キャッシュレス決済ということで言えば気になるのが、福岡ソフトバンクホークスの本拠地、その名も福岡PayPayドームだが、今のところ完全キャッシュレス化には踏み切っていない。ただ、やはり将来的には“完全キャッシュレススタジアム”を目指すといった構想が、2019年の段階からあるようで、スタジアムにおけるキャッシュレス化の動きは今後待ったなしで広がっていきそうである。

現代人の生殺与奪を握るカード会社

ただ、いくらキャッシュレス決済が目覚ましいペースで普及している状況だとはいえ、現金での支払いを一切廃してしまうという動きには、一抹の不安を覚えてしまうのも確かなところ。

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昨年秋にはモバイルSuicaにおいて大規模な障害が発生し、現金を持ってなかった人々が出先で詰んでしまうといった事態が起こったのは記憶に新しいが、つい先週も一部店舗でSuica決済ができないといった事態が発生し、復旧まで約4時間かかったという出来事があったばかり。完全キャッシュレスの施設に長時間滞在する予定の時は、いつ何時起こるかわからないこの手の不具合を考えると、複数の決済サービスが使えるよう備えておく必要がありそうだ。

さらに言えば、クレジットカードも含めたキャッシュレス決済は、そもそも災害発生時などの有事に弱く、やはりいくらかの現金は持っておかないと……といった考えも、まだまだ世間では根強いのも事実。

そのことを、昨今のロシアに対してのカード会社による“制裁”のニュースを見聞きして、改めて実感した方も多いかもしれない。すでにVISAとマスターは、今月5日にロシアでの業務を停止すると相次いで報じられていたが、続く6日にはアメリカン・エキスプレスも同様に、ロシアでの業務を停止すると発表するに至っている

なんでもロシア国内におけるキャッシュレス比率は7割にも及ぶそうで、これらの措置が現地民にとって相当な打撃となっているのは間違いなさそう。またそれと同時に、カード会社が現代人にとって生殺与奪を握る存在であることを、如実に思い知らされたという方も多いかもしれない。

今後はスタジアムに限らず増えていきそうな“完全キャッシュレス”の施設だが、それらの便利さを享受できるのも、ひとえに平和な世の中であってこそ……というのは、間違いなく言えそうである。

Next: キャッシュレス社会なあの国でも現金引き出しが増加?

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