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習近平にとって誤算だらけのウクライナ侵攻。「ドル覇権」の牙城崩せず、国家主席3期目にも赤信号=斎藤満

中国にも効果が見込まれる「SWIFT排除」

ウクライナ危機によって米国の外交エネルギーを消耗し、中国を優位に立たせたい思惑が狂っています。そして中国も、対ロシア経済制裁を見て脅威に感じています。

特に、金融機関をドル決済システム(SWIFT)から排除する策を強く意識しています。万が一中国にもこれが適用されれば、中国経済は立ちいかなくなるためです。

米国はロシアとも中国とも軍事力で戦争する気はありません。核戦争になるリスクが高いためです。

従って、攻撃手段として経済金融制裁を使う考えです。もとより、欧米がロシアの銀行をこのSWIFTから排除する金融制裁は、もともとは米国が中国向けに考えたもので、中国が台湾に侵攻すれば、このカードを切る考えです。

今回は、いわばロシアを利用した「予行演習」でもあります。

そしてこれを見た中国幹部は震え上がりました。中国はこれまでドル依存を低下させ、人民元の国際化を進めてきましたが、今回の欧米によるロシア銀行のSWIFT排除制裁を見て、ドル離れを一層加速させようとしています。

まず、かねてからサウジアラビアとの間で石油輸入時の決済通貨を、ドルから人民元に変えようと働きかけていました。今回のロシア向け制裁をきっかけに、中国はこの動きを加速させようと、交渉を急いでいます。

幸い、サウジ側も、米国のアフガニスタンからの撤退やイランとの核協議に不満が募っていて、中国のオファーに乗りやすい状況にありました。

デジタル人民元もSWIFT排除の防波堤にはなりえない

そして中国はデシタル人民元の推進とともに、SWIFTから外されるリスクにも備え、人民元建て取引用の決済システムCIPSを推進しています。そしてロシアとの取引にもこれを活用する案が検討されています。

しかし、いずれも中国の銀行がSWIFTから排除された場合の救世主にはなりえないと見られています。むしろ、こうした中国のドル離れ行為に対しては、米国の反発を呼ぶ面があります。

実際、かつてイラクのフセイン大統領が米国によって排斥されましたが、その原因の1つに、イラクが石油の決済通貨をドルからユーロに変えたことに米国が制裁を加えたとの見方があります。

今回はサウジや中国が米国の反発を買う懸念があります。

そしてデジタル人民元がドルに取って代わるには程遠く、CIPS利用者の多くはあわせてSWIFTを利用している現状を考えれば、中国の銀行がSWIFTから排除された際の防波堤にはなりえません。

それだけに、中国としても、うかつに台湾侵攻に出るわけにはいかなくなりました。

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