7. 戦争(恩恵は資源国と軍需産業だけ?)
ロシアのウクライナ侵攻が誘発した世界規模の経済戦争は、世界の多くの人々に多大なコストを強いている。恩恵があるとすれば、値上がり益が享受できる資源国や関連企業と、需要が高まった軍需産業だけかも知れない。
コストの一例として、以下にブルームバーグの記事を引用する。
資産運用大手のパシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)は、ロシアをデフォルト(債務不履行)に追いやる厳しい制裁が投資家に及ぼす影響について米財務省に警告した。
PIMCO幹部は、運用会社がロシア関連資産の評価額引き下げを迫られた場合に米年金基金に発生する損失を財務省に説明した。事情に詳しい関係者が明らかにした。
ロシアがデフォルトすれば、債権者に支払われるはずだった外貨準備がプーチン大統領の手元に残り、軍事資金が増えることになるとも説いた。
北方領土周辺水域での漁業も同様だ。ロシアのトルトネフ副首相は6月10日に、北方四島周辺で日本側に割り当てられた漁業権は「取り上げられるだろう」と述べた。日本が漁業権割り当てに対する支払いを拒否していると話し、責任は日本側にあるとの見方を示した。
※参考:日本の漁業権、取り上げも ロシア副首相、北方領土周辺で:東京新聞(2022年6月10日配信)
これらはすべて、対ロシア制裁により、ロシアを西側の世界市場から締め出したことで起きている。
ロシアは全ての債務を履行しているとするが、米政府は金融機関にロシアとの取引を禁じているので、投資家は受け取る手段がない。
日本は漁業権割り当てに対する支払いをしようとしているが、ロシア政府に手渡しでもしない限り、送金の手段がない。仮に手渡ししたとすれば、ロシアの戦争に協力したとして日本側が制裁を受けることになる。
つまり、世界はすでに分断されており、少なくとも当面は以前のように戻る見通しはない。その当面が数十年にもなる可能性すらあるのだ。
何を根拠に「長期投資こそが安全で確実」などと言えるのか?
このように、今の世界は2021年までの世界とはまったく違うのに、何を根拠に「長期投資こそが安全で確実」などと言えるのか?
投資は日常生活と同じだ。毎日の生活も、意識する、しないに関わらず、リターンとリスクの兼ね合いの連続だ。毎日の生活で、何かが起きればその対処をするしかない。投資もまったく同じなのだ。
ディーラーなどは、瞬間、瞬間に起き続けているそうした変化への対処を続けている。こうあるべきだ。こうなるはずだ。そうした拘りは、迅速な対処を遅らせるものとなる。
日常生活のどこにも「安全で確実」なものなどないのに、長期投資だけが例外だとするのは、ミスリーディングだと言っていい。
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『相場はあなたの夢をかなえる ー有料版ー』(2022年6月20日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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