fbpx

「長期投資こそ安全で確実」を疑うべき7つの根拠。現在は誰も見たことがない相場環境にある=矢口新

株式運用に関して「長期投資こそが安全で確実」という言葉をよく聞く。自分の身や日本、いや世界全体を、過去5年・10年・15年前に遡って見て、今の状態が想像できていた人は、おそらく誰もいない。このことは、先のことも誰も分からないことを意味している。それでも、安全で確実な投資と言えるものがあるのだろうか?(『相場はあなたの夢をかなえる ー有料版ー』矢口新)

※本記事は矢口新さんのメルマガ『相場はあなたの夢をかなえる ー有料版ー』2022年6月20日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。配信済みバックナンバーもすぐ読めます。

プロフィール:矢口新(やぐちあらた)
1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。アストリー&ピアス(東京)、野村證券(東京・ニューヨーク)、ソロモン・ブラザーズ(東京)、スイス・ユニオン銀行(東京)、ノムラ・バンク・インターナショナル(ロンドン)にて為替・債券ディーラー、機関投資家セールスとして活躍。現役プロディーラー座右の書として支持され続けるベストセラー『実践・生き残りのディーリング』など著書多数。

「長期投資こそが安全で確実」を疑え

株式運用に関して、よくメディアなどで目にし、その都度、「そういうことをまるで真理かのように断定していいのだろうか」と、私が感じていることがある。

「長期投資こそが安全で確実」だと言うものだ。

自分の身や日本、いや世界全体を、過去5年、10年、15年前に遡って見て、今の状態が想像できていた人は、おそらく誰もいない。このことは、先のことも誰も分からないことを意味している。それでも、安全で確実な投資と言えるものがあるのだろうか?

似たようなことが、原子力発電でも言われていた。その「安全、安定、安価」神話は3つとも見事に崩壊したが、確たる根拠も示さずに、そうした安請け合いは繰り返されるものなのだろうか。

確かに、日経平均を1990年8月以降に買った人は、2020年11月半ばまでのどこで買っても儲けている。しかし、このことは逆に、それ以前や、それ以降に買った人は、必ずしも儲けることができていないことを意味している。

日本株よりもはるかに収益力がある米株なら「長期投資こそが安全で確実」なのかと言うと、こちらもこの1年以内のどこで買っても損失が出ているのだ。

このことは、このところの世界の株価が低迷しているために、1年以下、あるいは数年以下を短中期投資だと切り捨てて、「長期投資ならば安全で確実」だと言いくるめているのではないかと思えるのだ。

私自身は、「長期投資ならば安全で確実」だとは見ていない。現在の相場は少なくとも今生きている人の誰も経験していない、恐らくは、人類始まって以来の特殊な環境下にあるからだ。これまでの経験則は通じない。しっかりとした合理的な根拠がない話を信じていては、大変な目に合う可能性がある。

安易に「長期投資ならば安全で確実」だという見方を広げているメディアの方々も、少なくともご自分なりの根拠を示すことがメディアとしての責任ある行動かと思う。

以下に、そう言う私の根拠を述べる。

1. 前代未聞の急ブレーキと急発進

急ブレーキとは、新型コロナウイルス対策で経済を止めたことだ。急発進とは、止めた経済を「持続化」させるために、金融、財政共に大判振る舞いをしたことだ。

生命活動とも言い換えられる経済活動の、ロックダウンを含む大幅な自粛は、人類史上初めてだった可能性がある。何故なら、細菌やウイルスが様々な疫病の原因であることが判明したのは19世紀になってからなので、それまでは発病した人を隔離することがあっても、ほとんどが健康人である地域全体を隔離状態にする発想がなかったはずだからだ。

結果的に、各国の経済の落ち込みは過去最大のものとなり、その再生には過去最大の資金供給が必要とされた。前代未聞のパニックに引き続き、前代未聞のバブルがつくられたのだ。

こうした「前代未聞の急ブレーキと急発進」を受けた、この1年余りの株価の低迷が、過去の経験則などで乗り切れるものなのだろうか?

Next: 長期投資にも罠。数十年ぶりのインフレ、史上最低金利からの利上げ…

1 2 3 4 5
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー