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東京五輪の経費「招致時の2倍」で心配される札幌五輪の行く末。日ハム撤退後のドーム試算も「甘すぎ」と呆れられた札幌市が同じ轍を踏むのは確実?

昨年開催された東京オリンピック・パラリンピックの組織委員会が、21日に最後の理事会を開き、最終的な開催経費が総額1兆4,238億円に上ったと公表した。

報道によると、新型コロナウイルスの感染拡大で1年延期されたことで、2,940億円の経費増が見込まれていたが、無観客開催に伴う警備費用などの減額により、実際の経費増は738億円にとどまったとのこと。ただ、招致活動段階の立候補ファイルで示した7,340億円という金額からは、ほぼ倍増する格好となったようだ。

大会経費の費用分担は「組織委=6,404億円」「東京都=5,965億円」「国=1,869億円」となり、組織委は競技や式典などの大会運営費、都は東京アクアティクスセンターなどの施設整備費、国は国立競技場建設とパラリンピック経費を主に負担したという。

日本ハムに逃げられた札幌市の“試算”に呆れる声

「世界一コンパクトな五輪」を掲げて進められてきたハズが、結局のところは多大な経費がかかる結果となってしまった東京五輪。いっぽうで、今回のために作られた数々の競技施設、いわゆる“レガシー”のほうも、今後の赤字続きは確実といった情勢のようだ。

具体的には、例えば国立競技場では2022年度だけで、維持管理費などで約13億円の赤字、また土地の賃借料も11億円ほどかかるとのこと。さらに競泳の会場となった東京アクアティクスセンターも、都の試算では毎年6億4,000万円の赤字となるなど、多くの施設で大赤字となる見込み。これらの補填は、都民の税金によって賄われることになるという。

このようにレガシーはレガシーでも“負の遺産”を背負わされる格好となった東京都民だが、このような状況が大きな影響を与えるのではと指摘されているのが、札幌市などが招致を目指している2030年冬季五輪の行く末だ。

札幌五輪の開催経費に関して札幌市は、既存施設の活用などによって、施設整備費は800億円、大会運営費2,000億~2,200億円に抑え、大会運営費に関してはスポンサーやチケット収入、IOCからの負担金で賄うことで、税金の投入はしないと明言している。ただ、同様のことを掲げた東京五輪が、結果的に開催経費が倍になっただけに、札幌もやはり……という見方が広がるのは無理もないところ。

さらに札幌市による“試算”といえば、日本ハム撤退後の札幌ドームの収支が黒字になると見込んだ件が、「ザル勘定」だと総ツッコミを受けたばかりである。

札幌ドームを本拠地としていたプロ野球の北海道日本ハムファイターズだったが、札幌市の第三セクターである札幌ドームの運営会社は日本ハムに対し、球場使用料にくわえて場内広告やグッズ販売、飲食などといった、興行時のドーム内での売り上げの一部なども召し上げるという、ある種の“奴隷契約”を強要。これ業を煮やした日本ハムは、札幌近郊の北広島市に自前の新球場を建設し、2023年に移転することとなった。

日本ハムに捨てられた格好となった札幌ドームは、従来の売上の約5割を失うこととなったのだが、札幌市はサッカーJ1のコンサドーレ札幌の試合開催や2万人規模の大きなコンサートの実施、さらに展示会の誘致などで、23~27年度の純損益は計900万円の黒字となるとの試算を発表。これに対して、SNS上などからは「札幌ドームを埋められるアーティストなど何組もいないのに……」などと、その甘すぎる見通しに対して呆れる声が続出したのだ。

五輪誘致反対が半数を超える調査結果も

札幌市としては、自らの殿様商売が仇となって大きな損失が出たことを、すこしでも取り繕いたいがために、このような“夢見がち”もいいところの試算を出したといったところか。ただ、それによって札幌市が掲げる“コンパクト五輪”の試算に対しても、「どうせ眉唾物」「これも甘々なんだろう」と一部の市民から見做されてしまう展開になっているようだ。

その影響もあってか、札幌市民のなかで五輪誘致に対して異論を持つ向きは増えているようで、札幌市が今年3月に行った郵送調査では、賛成派は約52%と辛うじて過半数を超える数字にとどまったとのこと。さらに、その後の4月に地元メディアの北海道新聞が札幌市民を対象に行った世論調査では、「どちらかといえば反対」「反対」があわせて約57%と、反対意見が賛成意見を上回ったというのだ。

この流れを受けて、札幌市議会には五輪招致の賛否を問う住民投票を行うための条例案が提出されたものの、こちらは今月6日に賛成少数で否決される結果に。2030年冬季五輪開催地は、来年5月から6月にかけてインドのムンバイで開かれるIOC総会で決まる予定となっており、それに向けた札幌市などによる招致活動は継続されることになったが、反対の声のさらなる高まり如何によっては、“途中ギブアップ”の可能性も大いに孕んでいると言えそうだ。

Next: 「札幌で開催されたら同じように負の遺産を背負わされる…」

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