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猛暑は日本経済にプラスかマイナスか。富裕層と一般市民で二極化する消費行動=斎藤満

暑い夏はプラスかマイナスか

一般に個人消費を規定する要素は実質所得や実質金融資産という予算制約で、所得や過去に蓄えた資産が多いほど消費は大きくなります。

従って、物価高が進むと実質所得、実質金融資産の購買力が低下して消費を抑制します。長い目で見れば、この予算制約が大きなカギとなります。

その中で、短期的には消費性向の上下により、予算制約の中でも消費が増減します。その要素の1つに、夏らしい夏や冬らしい冬には、夏物、冬物需要を刺激し、消費が所得以上に増えると言います。

そこで問題になるのが、「夏らしい夏」と「猛暑」の違いです。

前者は衣類やレジャー消費を高め、ビールやアイスクリームなどの需要を刺激します。しかし、気温は高ければよいわけではありません。

コンビニによると、気温が25度から30度のあたりではアイスクリームがよく売れ、30度を超えるとアイスクリームは落ちて氷が売れると言います。カフェでも30度を超えるとアイスよりかき氷が売れると言います。

さらに35度を超えると「熱中症」リスクが高まり、高齢者などは外出を控えるケースが増えます。

6月から各地で猛暑日が多発し、熱中症で救急搬送されるケースが増えています。コロナに代わる新たな脅威となりつつあります。医療費が増えても消費活動が制約されることになります。

高齢者が家の中で熱中症になるケースが多く、冷房を使うように指導されていますが、電気代高騰の中で、冷房利用による電力消費がかさみます。この夏の電気代は前年より20%以上増加し、他の消費を圧迫します。

炎天下での外出は高齢者には命取りになります。

京都や鎌倉などの観光地では人手が増えていますが、猛暑が続くとサービス提供者の人手不足による「供給制約」と「猛暑」の危険性から高齢者が外出を控えて需要が高まらないケースも考えられます。

これから3か月も「暑すぎる夏」が続くことになれば、夏物消費の増加を、猛暑リスクが打ち消すリスクがあります。

物価高の夏

暑い夏を迎えるなかで、物価高が消費の前に立ちはだかっています。

日銀は物価の基準として生鮮食品を除く「コア」やさらにエネルギーも除いた「コアコア」を尺度として利用し、前者は前年比2.1%、後者は0.8%の上昇に過ぎないと、「インフレではない」ことを強調しています。

しかし、電気ガスや生鮮食品を消費しないですむ人はいません。

生鮮食品もエネルギーも前年比2桁の物価上昇をしめし、電気代はさらに値上げが予定され、生鮮以外の食品も値上げが目白押しとなっています。

帝国データの調べによると、わかっているだけで1万品目以上の値上げが決まっています。実体的なインフレ率は0.8%でも2.1%でもなく、すでに約3%の上昇となっています。総務省、厚労省もこれで実質値を計算しています。

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