猛暑と物価高が続く中で、日本の消費はこれから二極化しそうです。年収176万円の非正規労働者が全体の4割近くも占め、やはり無職の年金世帯も全体の4割近くに上っています。これらの層はリベンジ消費したくても購買力が伴わず、物価上昇で実質購買力が低下し、電気代に食われた「可処分所得」はさらに減ります。一方で、年収1,000万以上の世帯では電気代が高くても「値上げ許容度」が高まり、猛暑、物価高でも消費を増やす余地はあります。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満) ※この記事は音声でもお聞きいただけます。
※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2022年6月29日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。
変わる消費行動と制約
2020年春の新型コロナウイルスの感染拡大を機に、個人の生活様式、働き方とともに、消費行動も大きく変わりました。
対面型サービス需要を中心に、感染リスクの高い場所、手段の消費行動が縮小しました。交通機関や観光地、遊園地、イベントなどが控えられました。
新型コロナの重傷者、死者数が減り、脅威が低下するとともに、こうした感染リスクを意識された対面サービス需要が復活し、これまで消費の手控えで蓄えられた「強制貯蓄」の爆発や、これまでの我慢からリベンジ消費がキーワードとなって消費拡大への期待が高まっています。
しかしその一方で新たな制約が生じています。
猛暑でにぎわう公共図書館
時々近所の図書館に行ってWSJ紙やNYタイムズ紙を読んだり、調べごとをするのですが、梅雨のころは割と空いていて、椅子席も余裕があったのですが、先日猛暑の中を出かけてびっくり、高齢者でかなりにぎわっていて、席もほぼ満席状態です。
TVニュースでは猛暑の風物詩として、噴水や水場で遊ぶ子どもの姿が定番でしたが、今や公共図書館が猛暑の風物詩になりつつあります。
これには2つの要素が考えられます。節電を求められ、家でエアコンを使うのを憚れる高齢者が、エアコンの利いた街の公共図書館に涼みに行っている面があります。
同時に、この4月分から年金が0.4%減額されましたが、その一方で生鮮食品の価格が高騰し、電気ガス代が高騰する中で、財布のひもがきつくなっていることです。
つまり、今日の個人消費をめぐるキーワードは「猛暑」「物価高」となっています。