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食品市場もガラパゴス。日本人だけが気づいていない東南アジアの食品意識の大進化=牧野武文

今後、経済成長が著しいと予想される東南アジアでは、消費者の生活レベルが急速に向上し、食品に対しての意識も大きく変わり始めました。アジアに対して日本人は10年、20年前の認識のままでいますが、今回はそれを覆すアジアの食品市場の最新の6つのトレンドを見ていきます。(『知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード』牧野武文)

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※本記事は有料メルマガ『知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード』2022年8月1日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:牧野武文(まきの たけふみ)
ITジャーナリスト、フリーライター。著書に『Googleの正体』『論語なう』『任天堂ノスタルジー横井軍平とその時代』など。中国のIT事情を解説するブログ「中華IT最新事情」の発行人を務める。

スマホが変えた東南アジアの食品意識

今回は、アジアの食品に対する意識の変化をご紹介します。

今、世界で力強く経済成長をしているのは東南アジアです。それに伴い、東南アジアの消費者の生活レベルも向上し、食品に対する意識も大きく変わり始めています。

今回、ご紹介する6つの変化は、健康志向などを始めとするもので、多くの方にとって意外ではないと思います。私たち日本人も食品に対しては同様の意識を持つようになっています。

しかし、今回注目していただきたいのは、東南アジアの消費者の意識が急速に変化をして、場合によっては日本よりも進んでいるのではないかと思える点です。このような急速な変化とスマートフォンは無関係ではありません。

すでに東南アジア全体で、スマホの保有率は75%を超え、日本の2018年の普及率と同じになっています。また、インドネシアでは、銀行口座の保有率が成人の50%、クレジットカード保有率が5%程度と低いままですが、それだけにスマホ決済が急速に普及をし、EC、ライドシェア、フードデリバリーといったサービスが日常的なものになっています。

スマホ以前の社会サービスが脆弱であった分、スマホ以降、急速に社会サービスが充実をしてきています。これにより、この数年で、消費者の意識が大きく変化をしているのです。

もし、私たちの東南アジアに対するイメージが、10年前の「生活は不便だけど、のんびりした時間が流れている癒しの東南アジア」のままだと、東南アジア市場を読み違える危険性があります。

今回は、食品に対する意識調査のデータをご紹介していきますので、それを見て、東南アジアの消費者のイメージをアップデートしていただければと思います。今回は、アジアの消費者の食品に対する意識の変化をご紹介します。

食品意識でもガラパゴス化する日本

今、世界経済で注目すべきは東南アジアです。欧米+日本のような先進国はもはや大きな成長をすることは難しく、特にコロナ禍では大きく落ち込み、かなり傷んでいます。2021年のGDP成長率は景気のいい数字が並びまましたが、比較対象となる2020年が大きく落ち込んだためであり、コロナ前に戻っているとは言い難いものです。国際通貨基金(IMF)の予測によると、米国、ユーロ圏ともに2022年、2023年は厳しい数字が並んでいます。

▲IMFが発表した2022年4月の世界経済見通し。2022年以降、世界の経済成長は低迷するが、アジアの新興国と発展途上国は成長をすると予測されている。

戦争が経済回復を抑制する

一方、アジアの新興国と発展途上国の成長率予測は非常に高いものになっています。今後、高度成長が期待できるのはインドを要する中央アジア、中南米、アフリカなどですが、IMFの予測数字は渋いものになっています。まだ、成長に必要な基盤を整えるのに時間がかかるようです。

東南アジアは本格的に成長時代に入っています。中国企業は自国経済が頭打ちになっていることもあり、積極的に東南アジアに投資、技術提供を行い、東南アジアの成長を加速させています。

東南アジアが成長をするということは、東南アジアの市民の生活も豊かになっていくということです。以前は身近で手に入る食材を食べるしかなかったところに、食材を選べるようになってきます。これにより、さまざまな食品に対する消費トレンドが生まれてくることになります。

今回は、そのような食品に対する6つのトレンドをご紹介しますが、その多くは、ほとんどの方が想像できるもので、意外なところはほぼありません。では、なぜ取り上げるのかというと、みなさんに日本のガラパゴス感を感じていただきたいからです。

食材に対するアジア各国のさまざまな統計もご紹介しますが、アジア各国は食材に対する意識が大きく変わっているのに、日本だけは、ほとんど変化をしていません。もちろん、それが悪いことだとは思いません。何を食べるかは、それぞれが好きなものを食べればいいのであって、流行だからといって、なじんだ食習慣を変える必要はありません。

また、日本の食環境はかなり以前から安全面や多様性が進んでいて、多くの人がそれなりに満足をしていて、特に大きな不満はありません。ですから、新しいトレンドにも敏感にはならない傾向があります。これは別に悪いことでもなんでもありません。

しかし、問題は、私たちは、ついつい日本の感覚で海外、特にアジア圏を眺めてしまう傾向があるということです。日本の食環境が保守的なのだから、アジアでもそうだろうと思ってうっかりしていると、気がついたらアジアでは食環境がものすごく変化をしていたということが起こり得ます。

これは、食関係のビジネスに携わる方にとっては、大きなチャンスを見逃すことになりますし、私たちが誇る伝統文化である日本食、日本料理をアジアに売る時にも、アジアの人たちから見たらトンチンカンな売り方をすることにもなりかねません。

中国の製造業やテクノロジーについて、韓国の音楽や映画について、私たちはどこか甘く見ていて、気がついたら背中も見えない状況になっていたという失敗をしているのですから、東南アジアに対して、同じ誤ちをするわけにはいきません。

私たちが毎日食べる食べ物は、自分が好きなものを食べればいい。でも、アジアを見る時には、食環境に大きな変化が起きているという目でしっかりと見ることが重要です。

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