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ウクライナ反転攻勢は嘘、日本ほか西側メディアが報じぬ本当の戦況。米軍高官が提案する政治的決着とは?=高島康司

軍事専門家の伝える実際の戦況

以下は筆者が参照している専門家や専門サイトの戦況分析である。以下にそれらを列挙する。戦況分析は地名など非常に細かいが、分かりやすくするために詳しい地名は省いた。

アジアタイムズ

香港をベースにした英字ニュースのサイト。専門性に定評がある。ここは複数の軍事シンクタンクから得られる情報を総合して、戦況分析を提供している。

8月29日にヘルソン地域のいくつかの地点でロシアの防衛線を突破したという報告を受けているが、現在ではそのような突破は起こっていないことが明らかになっている。もちろん、このことは、頻繁に行動をリアルタイムで追跡しているNATOのオブザーバーにとっても明らかである。

3月に設定された南のヘルソン市とミコライフ市のほぼ中間、ヘルソン市から北北東に約60キロ、インフレート川を渡るウクライナの橋頭堡周辺、ヘルソン市の北東、アルハンヘルスケからドニエプル川までの約100から110キロの支配線はほとんど変化していない。

注目すべきは、ドネツクから西へ向かうロシア軍が、ここで1キロ、あそこで2キロと進んでいることだ。時間が経てば、このように遅い前進でさえ、ドネツク州の西部にロシア軍が侵入する脅威となる。ウクライナ側が南方へ兵力をシフトさせるのを防ぐには十分だろう。

北側のドネツク州の行動は、ドンバス渓谷の入り口を支配するバクムトの輸送拠点に対する、ロシアのワグネル準軍事部隊の先導による継続的な圧力によって支えられている。ドネツク市の南側でロシア軍は北上し、調査を続けている。

すべての前線で、ロシア軍の大砲が毎日最大4万発を発射しているのに対し、ウクライナ軍は約6千発から最大で8千発を発射している。ウクライナ空軍の出撃回数20回に対して、ロシアは1日100回を下回ることはなく、明らかに航空戦力を予備として保持している。(※筆者訳)

これを見ると明らかだが、南部ヘルソン州のロシア軍の支配地域には変化がない。つまり、ウクライナ軍の攻勢は成功していないということだ。

またロシア軍は、空軍力でも火力などでも圧倒的にウクライナ軍を上回っているので、ウクライナ軍の攻勢が成功するとは思えないというニュアンスだ。

Ejercitos

スペインの著名な軍事情報モニタリングサイト

一般論として、状況はここ数日と同じで、戦線は数週間にわたって実質的に静止したままである。この状況は、海外で訓練された新しいウクライナ軍の到着により、ウクライナに有利に、またはロシアの第3軍団の一部がこの地域に到着すれば、逆にロシアに有利になる可能性がある。(※筆者訳)

ここもウクライナ軍の攻勢でも大きな変化は見られず、膠着状態が続いているという認識では一致している。

ストラトフォー

「CIA」が最大のクライアントのシンクタンク。「CIA」の出先機関とも言われ、米外交政策に一定の影響力を持つ。

ウクライナは2カ月ほど前から南部ヘルソン近郊で攻撃を開始したが、ほとんど成果を上げていない。ウクライナの大規模な反撃がヘルソン地域で迅速に展開される可能性が低いのは、最近のロシア軍の増援以外にもいくつかの理由がある。まず、ウクライナには基本的に大規模な攻撃作戦を実施した経験がない。第二に、最もよく訓練されたウクライナ軍部隊は多大な犠牲を払い、大部分がドンバス地域に留まっている。そして第三に、ロシア軍はウクライナ軍を制圧するための大砲や弾薬で優位性を保っている。(※筆者訳)

ここもウクライナ軍の攻勢は成功していないと見ている点で、他のサイトと一致している。

Next: 本当の戦況を伝える情報源を定点観測。この戦争の落とし所は?

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