既得権益固定化の構造、どうすればよいのか?
このような内部留保金の異常蓄積の日本独特の構造を見ると、これはまさに既得権益を固定化する構造であることが分かる。
簡単に言うと、リスクのある投資を回避したために起こった売り上げの減少を、賃金の抑制と中小企業への値下げ要請で対応し、逆に内部留保金と役員報酬を増大させているのだ。
では、これを変えるためにはどうすればよいのだろうか?
実は解決策はさほど難しくはない。次の3点を徹底すればよい。
1. 内部留保金への課税制度(一定割合以上の内部留保金には極端な課税をかける)
2. 政府が手厚いセイフティーネットを提供し、企業が自由に解雇できるようにする(数年単位の失業保険と技能訓練制度)
3. 高額な役員報酬の制限(売り上げの変動と連動させる)
この3点だ。すでに(1)は韓国や台湾で実施されている。そして(2)だが、すでにドイツ、フランス、オランダ、そして北欧諸国などの欧州諸国で実施され、3年から4年程度の長期の失業給付と職業訓練を政府がセットで提供している。このような制度の組み合わせがあれば、労働者もひとつの企業にしがみつくことなく自由に転職できるだろうし、また大企業も積極的に投資をせざるを得ない状況になる。
誰が日本経済を沈んだままにしているのか?
だが、これを日本で導入するのは極めて困難だと考えられている。
この悪循環の出発点になったのは、経団連の要請に基づき、小泉政権の竹中平蔵の主導で導入された派遣労働者法の改正だった。これで、全製造業で派遣労働が解禁され、それとともに非正規労働者が急速に増大し、賃金は下落した。
言って見ればこうした悪循環の構造は、経団連に連なる日本の大企業が既得権益を維持し、固定化する動きが必然的に作り出したものである。
そして、経団連と大企業を最大の支持母体にしているのは、現在の自民党である。
いま自民党は旧統一原理協会との闇の結び付きで批判の対象になっているが、非難されるべきは、むしろ日本の大企業の既得権益との結び付きかもしれない。
そのような与党が、自らの支持母体の既得権を犯すような政策を実施できるとは到底思えない。もちろん、野党であれば実施できるというものでもないだろうが。
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