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南鳥島“レアアース”開発にいよいよ本腰との報道に「遅すぎ」との声が。このままでは日本のEEZギリギリ外で採掘の資源を中国から買う“悪夢”も?

本州から1,800㎞離れた日本の最東端・南鳥島周辺の海底に眠るレアアース泥を巡り、政府が来る本格的な採掘に向けて、来年度にも技術開発に着手すると報じられている。

レアアース泥とはレアアース(希土類)を豊富に含む泥で、南鳥島沖の埋蔵量は国内消費量の数百年分相当と推計されている。電子機器の生産に不可欠なレアアースの国内調達を実現させることで、中国からの輸入への依存脱却を図るのが狙いだ。

複数の政府関係者によると、2022年度第2次補正予算案にも、関連経費を盛り込む方向だといい、5年以内の試掘を目指すという。

日本のEEZ境界線ギリギリを調査する中国船

まさに“貴重な土”を意味するレアアースは、例えば電気自動車の駆動用モーターやスマホのマナーモードの振動が、レアアースから作られる永久磁石「レアアース磁石」によって実現したように、テレビやデジカメ、PCやスマホに次世代自動車など、様々な電子機器の生産に不可欠な存在。

日本は今のところそんなレアアースのほぼ全量を輸入に頼っているのだが、その採掘や精錬を、長らく一手に担って来ていたのが中国。2010年には尖閣諸島付近で日本の巡視船と中国漁船が衝突する事件が起き、中国人船長が逮捕されたことの報復で、中国政府が日本へのレアアースの禁輸措置を実施。価格が急上昇するなどの大混乱が発生したこともあった。

そんな「レアアースショック」を契機に日本では、オーストラリアにあるレアアース鉱山への出資など、中国を介さないレアアースのサプライチェーン構築、さらにレアアースの代替となる材料の開発が進んだのだが、とはいえ現状でも約6割は中国から輸入している。中国もレアアースの輸出管理を強めているだけに、経済安全保障の観点からもレアアースのさらなる“脱中国依存”は急務というわけだ。

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いっぽうで、南鳥島近海の海底にレアアース泥が存在することが判明したのは、先述のレアアースショックの少し後の2012年。さらにそれが、中国の鉱山で採掘されるものと比べて十数倍から20倍という、極めて高い濃度のレアアースが含まれていることもわかり、来る本格採掘に向けての調査や掘削試験が続けられてきた。

ただ、そのような状況を快く思わないのが中国で、2018年には「海洋調査」を名目に日本のEEZに船舶を派遣し、日本側には無断で希少資源などを採取していたことが取沙汰されたことも。さらにその後も、中国の調査船が日本のEEZの境界線ギリギリを沿うように走行するといった不審な挙動が、度々認められるのだという。

たとえ日本のEEZ内にある資源とはいえ、中国もその権益を虎視眈々と狙っているといった、ある意味で切羽詰まった状況。にも関わらず、日本政府の動きはどことなく緊張感が欠けるといったところで、たとえば南鳥島周辺への調査航海を計画している東京大学のプロジェクトなどは、公的資金だけでは充分ではないということで、足りない分を寄付で賄おうとしている状態だというのだ。

今の円安下で採掘できてれば…との皮算用も

そのような状況のなか、政府もいよいよ本腰を入れて、本格的なレアアース採掘に向けて動き出すといった今回の報道に対しては、日本国内から多くの歓迎する意見があがっているのだが、その反面で一部からは「遅い」「いまさら…」といった声も。

南鳥島近海の海底にレアアース泥が発見されたのは、もうかれこれ10年前のこと。その時点でレアアースの重要性は重々分かっていたのだから、そこから本気で調査や技術開発を急ピッチで進めて、本格的な採掘が現状で可能になっていれば、今の円安の状況下で莫大な富を得られたかもしれない……といった皮算用だ。

ただ、中国など他の産地では鉱山など地上で採掘できるのに対して、南鳥島近海のレアアース泥は海底からポンプで吸い上げるという“手間”がかかる点で、一筋縄ではいかないといった事情も。今後は、その採掘コストをどこまで下げることができるかという点も、大きな課題となっていきそうだ。

政府としては5年後の28年度以降には、民間企業が参入できる環境を整えたいと考えているようだが、その後何年かかるか分からない軌道に乗る段階まで、今のような円安の状況は果たして続いているのかどうかは、神のみぞ知るところ。

またそれ以上に重要なのが、レアアース市場での優位性を保ちたい中国よりも先んじて、南鳥島周辺のレアアース資源を開発することができるかという点。先述した、東京大学のプロジェクトへの寄付を募るサイトにも「日本のEEZ近傍で生産されたレアアースを中国から買うという悪夢のような未来が訪れるかも知れません」という緊張感漂う記述があるように、日本の資源安全保障の確立のためにも、今までのように悠長に構える余裕は最早ないといったところのようだ。

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