物価をコントロールしても無駄な理由
2年前、日本ではマスクパニックが起こりました。マスクの値段が50枚で5,000円、1枚100円という異常事態です。
このマスク(国民生活に必要なもの)の値段が高騰しても結局、国内はデフレのままでした。
なぜ、このようなことが起こるのかといえば、日本人の所得が伸びないからです。たとえば月100万円の収入があっても、一般家庭はその100万円の中でやりくりをするだけだからです。
マスクの出費が増えたら、他を削るだけで、総額の出費は100万円で変わらない状態なのです。
いま電気代やガソリンなどが高騰していますが、どんなに多く消費する家庭でも月に5万円も行けばよい方だと思います。その増えた分を、他の消費を削ればいいだけの話。つまり、エネルギー価格が増えたら他の消費を減らすので、全体的な物価は上昇しないということです。
通常、円安になれば日本経済の売り上げは上がるのですが、今回の円安では売り上げがちっとも増えないので、経団連などの経済団体は政府に「この円安は日本経済にとっては有害」と提言をしたのです。
要は問題が家計にあるのではなく、政府・日銀にあるのです。
日本がコロナ・ショックを受けて金融緩和や財政緩和を行うのは当然の処置です。しかし、その結果、企業の資金調達が安いコストで可能になり、結果として値下げが可能になります。これが今回のエネルギー高騰での節約の原資となるのです。
企業は円安になれば売り上げが増えることを期待して増産しますが、結果は思ったよりも売れない……ということだったのです。売れないのであれば、生産は細るということです。
その結果、不景気を理由に賃金を下げる「悪のスパイラル」に陥っているのが現状になると思います。
これ、財政緩和や金融緩和をやめれば解消しますよね、ということです。
インフレの原因は物価にはない
アメリカは反対に、企業の生産活動が活発です。消費者は利上げによってとくに富裕層・株式投資などができる層などは資産を保有しているだけで金利収入が入るので、インフレ7%に対して給料アップ5%で実質の所得減であっても、金利や配当収入がカバーすることになります。
よって、不景気でも売り上げが上昇するのであろう、と思います。その金利が4%なのですから実質の所得は増えているわけです。
ただ、貧困層はますます貧しくなるという欠陥も忘れてはなりません。ですから、貧困層は財政支援によって解決し、FRBは緩和を続けたいというのが意図になります。
インフレというのは通貨供給量が多すぎるのが原因ですから、インフレを納めるためには発行しているマネーを中央銀行が回収すれば収まるのです。
その場合、現金の価値が高まり、リスク資産である株や住宅、エネルギー、商品市況は大暴落します。株が安いと騒いでいる人たちはこのことを想定しているのでしょうが、FRBは金融緩和を止めたくないのです。だから、高いのです。
しかし、金融緩和を止めるのはやぶさかではないでしょうが、財政緩和を停止すれば、たぶん、政権支持率はダダ下がりになりますので、できないでしょう。だから、各国は財政支援拡大に走るのです。
要は金融緩和を止めても、財政緩和は今後数年は続けるほかない、というような状態です。
これでは世の中のマネー流通が減るわけがありません。そのマネーが儲かるところに資金が集中している状態です。
今は、そのマネーが金・白金などの貴金属に集まっているだけの話。これが高値を出しきると、今度はレアアースに行き、振り出しのエネルギーにまた行くだけの話です。そして、食料→貴金属→レアアース→エネルギーという連鎖になります。この連鎖は、株価が高いというコンセンサスができ上がると一気に株式市場に資金が流れ込むでしょう。
インフレの原因は物価にはないのです。
政府・中央銀行のお金の発行のし過ぎにあることがわかっていれば、中央銀行のやることは決まっています。緩和を縮小・停止すればいいのですが、やる気ないでしょ(笑)、日銀を筆頭に。