「3つの配慮義務」と「6つの禁止行為」
与野党での、法案を巡っての論点となったこの2つの項目を、条文から整理しておきます。
ネットでは、法案概要が1ページでまとまったものを見ることができます。
https://www.caa.go.jp/law/bills/assets/consumer_system_cms101_221201_01.pdf
法案の第3条が「配慮義務」になっていて
1. 自由な意思を抑圧し、適切な判断をすることが困難な状況に陥ることがないようにする
2. 寄附者やその配偶者・親族の生活の維持を困難にすることがないようにする
3. 勧誘する法人等を明らかにし、寄附される財産の使途を誤認させるおそれがないようにする
となっています。
(1)の「自由な意思を抑制」という部分が、マインドコントロールを念頭に置いた規定となっています。
第4条が「禁止行為」となっていて、以下の6項目が列挙されています。
1. 不退去
2. 退去妨害
3. 勧誘をすることを告げず退去困難な場所へ同行
4. 威迫する言動を交え 相談の連絡を妨害
5. 恋愛感情等に乗じ関係の破綻を告知
6. 霊感等による知見を用いた告知
このほかの禁止行為として、「寄付のために個人に借金させたり、自宅や土地などを売らせたりすることで、寄付の資金を調達すること」を要求してはならないとしています。
専門家の意見として、条文にあまりにも細かく行為を規定することで、教団側に「これ以外のことは罰せられない」という“お墨付き”を与えてしまうのではないかという意見も聞かれます。
相手からお金をむしり取る側は、いろんな抜け道を考えてくるものですからね。
取消権
これらの不当な勧誘行為を行い、寄付の勧誘を受けた人が「困惑」し、そのまま寄付をした場合は、その寄付を取り消す「取消権」を行使することができます。
新法の対象となるのは、遺言による贈与や債務免除といった「契約にあたらない寄付」で、「契約にあたる寄付」については、新法と同時に審議されている「消費者契約法の改正案」の対象になります。
同時に成立した霊感商法の被害を救済するための改正消費者契約法では霊感商法による契約を取り消せる期間を延長しました。契約締結から5年、被害に気づいてから1年という規定をそれぞれ10年、3年に延ばしました。
霊感商法による被害となりますが、取消権の行使期間を伸長しています。
・契約締結時から10年(現行5年)
・追認は3年(現行1年)
・時効が完成していないものには遡及適用
寄付者本人が寄付の取り消しを求めない場合でも、扶養されている子どもや配偶者に一定の範囲内で取消権を認め、本来受け取れるはずだった養育費などを取り戻せるとしています。
取り消せる霊感商法の範囲はこれまでの「不安をあおる」場合だけでなく「不安を抱いている」ことに乗じた手法に広げました。
罰則規定
第6章が「罰則」となっていて
第16条 第7条第3項の規定による命令に違反したときは、当該違反行為をした者は、1年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金に処し、またはこれを併科する。
第17条 第7条第1項の規定による報告をせず、または虚偽の報告をしたときは、当該違反行為をした者は、50万円以下の罰金に処する。
となっています。
寄付の原資を調達するのに借金をさせたり、自宅や田畑などを処分させたりするのも禁止しています。
寄付を勧誘する際に当事者の“自由意志”を抑圧しないよう配慮する義務が守られない場合、法人への勧告や法人名を公表できるようになっています。
附帯決議
旧統一教会の被害者救済を図る法案について、衆議院の特別委員会では、採決に合わせて付帯決議が全会一致で採択されました。
付帯決議では、個人の自由な意思を抑圧し、適切な判断が困難な状況に陥らせることがないようにするなど、寄付の勧誘を行う法人などに課す配慮義務について、法律を円滑に運用するため、その内容を具体例を示して周知するよう政府に求めています。
また、不当な勧誘行為に基づく寄付を行った本人が取り消しを求めない場合でも、扶養されている子どもなどが一定の範囲内で取り戻せる規定を踏まえ、子どもらが権利を行使できない事態が生じないよう、必要な支援を十分に講じるべきだとしています。
そして、法律の施行後2年とした見直しにあたっては、国会の審議で実効性に課題が示された点について検討し、必要な措置を講じることを政府に求めています。
施行は一部を除き公布から20日後で、過去の被害は対象外となる。施行後2年をめどに見直しを検討するという「附則」がついています。