fbpx

宗教とズブズブの自公政権で成立「旧統一教会被害者救済法」は救いになるか?共産党・れいわが最後まで反対した理由=原彰宏

教団側に厳しい答弁もありました

それでも、法案審議における与野党審議での首相への質問・答弁において、旧統一教会教団側に痛手となりそうな首相答弁がありました。質問者は、立憲民主党の山井和則議員です。11月29日衆議院予算委員会にて、母親が元信者の中野容子さん(仮名)が念書により敗訴した実例を挙げ、念書について質問しています。

教団は高額献金の返金が要求されそうになると、信者に「自由意思で行った」「教団に返還請求は行わない」など念書にサインさせ、ビデオ撮影まで行うことがしばしばある。これが被害者の裁判の訴えを妨げ、敗訴につながっていた面がある。教団からすれば、献金を正当化する強力なツールなのだ。

出典:「被害者救済法案」閣議決定→国会提出も…旧統一教会がビビる中身に仕上げられるか – 日刊ゲンダイDIGITAL(2022年12月2日配信)

これに対して岸田総理はこう答弁しています。

「困惑した状態で取り消し権を行使しない意思表示をしても(念書の)効力は生じない。むしろ、念書を作成させたり、ビデオ撮影をしていること自体が、違法性を基礎づける要素のひとつとなり、民法上の不法行為に基づく損害賠償請求が認められやすくなる」

出典:同上

この答弁に対し報道では

首相にここまで“ダメ出し”されると、さすがの旧統一教会も今後、念書やビデオ撮影をためらうのは明らかである。

出典:同上

とコメントしていて、前述の裁判で敗訴した中野さんも「(念書について)無効と、はっきりと総理が表明されたのはよかった」と評価していると報じられています。

マインドコントロールの取り扱い

与党としての公明党との連立政権である立場と、また前述の岸田総理との踏み込んだやり取りを踏まえて、今回成立した条文を見てみましょう。

修正前の自民党原案は、消費者庁ホームページで確認できます。
https://www.caa.go.jp/law/bills/assets/consumer_system_cms101_221201_02.pdf

法案内容の修正に関しては、長妻昭衆議院議員のホームページに資料として載っています。
https://naga.tv/wp-content/uploads/2022/12/ce9370814ff7776756c38f21c0f63093.pdf

有料記事にはなりますが、朝日新聞掲載の10日参議院で通過した法案です。
※参考:寄付の不当勧誘の防止等に関する法律 – 朝日新聞デジタル(2022年12月11日配信)

この法案は、結果として野党側の修正案を盛り込んだ形で成立しました。自民党総裁でもある岸田文雄総理としては、かなり思い切った判断かと思われます。

「困惑した状態」「念書の無効判断」「自由な意思表示」……山井議員と首相とのやり取りの中で出てきたキーワードが、条文でも大きなポイントとなっています。

山井議員とのやり取りで岸田総理が言葉にした「マインドコントロール」をめぐり、立憲民主党側は「政府案の配慮義務を禁止規定とすれば、これまで旧統一教会が行ってきた正体隠しやマインドコントロール的手法の抑止・救済の実現可能性が高まる(柚木道彦議員弁)」としていましたが、これに対して「マインドコントロールによる寄付については、多くの場合、不安を抱いていることに乗じて勧誘されたものと言え、取消権の対象となる。配慮義務は、禁止行為とする場合よりも、より幅広く行為を捉えることができ、民法上の損害賠償請求を容易にする効果が高い(岸田総理大臣)」とのやり取りがありました。

日本共産党はこの“マインドコントロール”を重要視して、「同法案は統一協会による悪質な献金勧誘行為─いわゆるマインドコントロールに適切に対応できないなど、被害者救済や被害防止にきわめて不十分で、5党による修正案でも根本的問題が解決されていない」と、最終的に法案に反対の立場を表明しました。

共産党の主張も、決して無視してはいけないところがあると思われます。

岸田総理は答弁で、「脱会したあとに、当時、不安に乗じられて困惑して寄付をしたというのであれば、それを主張し立証すれば、全額について取消権を行使することも可能だ。困惑状態でサインした念書は公序良俗に反し、無効になると考えられ、それ自体が違法性を基礎づける要素となり、損害賠償請求が認められやすくなる可能性もある」とも述べています。

「困惑した」状態の立証とありますが、「困惑」の状態を言語化するのは難しそうです。

そういう観点で言えば、「マインドコントロール」という状態の立証も、どうすればよいのでしょうね。

旧統一教会は、時間を掛けて教義を説くことでマインドコントロール下に置くことをしていますので、寄付時点の精神状態を「困惑」と判断できない可能性があります。

「困惑」していたかどうかの判断など、これからも検討していかなければならない課題だと思われますね。

「困惑」が寄付に繋がる因果関係を推定するのが被害者なのか、教団側かによっても異なります。

因果関係の推定規定が必要だと紀藤正樹弁護士は問題提議しています。

Next: 論点となった「3つの配慮義務」と「6つの禁止行為」とは?法案の中身

1 2 3 4 5 6
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー